住民タッグで私道整備
鎮守台自治会 (西東京市新町)
1970年代をピークに、現在のような住宅都市として発展を遂げたこのエリアで、ともすると見逃しがちな都市問題が静かに進行している。市が整備する「市道」に対し、「私道」の整備は誰が担うのかという問題だ。私道の場合、舗装工事は全額自治体が負担するが、排水工事(雨水管へつなぐ連結管などの整備)を含めた工事は、少なくとも5分の1は、所有者ないし地権者(私道に面する住民など)が担うこととなっている。
複数の地権者、合意形成の難航
しかし、地権者が複数いると全員の合意を得るのは難しく、整備が先送りされるケースが後を絶たない。西東京市の担当者は「所有者と地権者が別だったり、地権者が10人を超えると、途端に実現が難しくなる」と証言する。
最近、この困難を乗り越えた市民がいる。西東京市新町2、3丁目の鎮守台自治会の住民たちだ。側溝が崩れるなどし、慢性的に冠水被害が出ていた約320メートルの私道を、この春、同道に隣接する住民51人が約1000万円を分担して整備した。その負担額は一地権者あたり約5万円から160万円。負担額に差があるのは、住宅によっては道路幅の確保のために敷地内の塀の改修などが必要だったため。その過程では、負担額が一律でないこともあり、合意形成が難航した。計画から完工までに、4年を要している。
「手作り公園」で住民同士のつながりを
では、その困難を乗り越えられたのはなぜか。大きな要因として、道路工事とは直接関係のない下地作りがあった。住民同士のつながりを積極的に生み出したことだ。
現在、81世帯から成る同自治会の発足は1935年。歴史こそ古いが、役員を置き、規約を作ったのは実は昨年のこと。ごく最近まで、回覧板を回す程度のコミュニケーションしかなかった。近所でも、顔を知らない例が各所であったという。
その状態を変えたのは、手作りの公園とも言うべき、「ecoひろば」という交流拠点を設けたこと。町内にあった空き地を地主から借り、住民自ら手作業で整備したもので、開設したのは2年前。同自治会副会長の大森拓郎さんは「道路問題が難航するなかで、住民同士の交流が不可欠だと痛感していました。たまたまテレビ番組で隣人の集いが特集されているのを見て『これだ』と思い、コミュニケーションを図れる場を作ったんです」と説明する。
オープン当初は、一部の仲よしクラブがやっていることと冷ややかな目もあったそうだが、七夕まつりや敬老会、文化祭などを開くことでだんだんと地域に浸透。今では住民同士の交流が盛んになり、隣人を病院まで車で送迎したり、食材を分け合うといった光景が日常的に繰り広げられている。さる5月15日にも、住民が食材を持ち寄り、同所で道路完成祝賀会を開いた=写真。
同自治会会長の志村光明さんは「『ecoひろば』ができる前は多くの住民が顔も知らず、話もしなかったのに、今では、特に子どもたちが笑顔であいさつをするようになりました。『ひろば』も道路も、人と人の心が行き交う場所。こうした公共財産を大事にしながら、皆さんと一緒に長く暮らしていきたいですね」と話す。
市内の私道整備の実情と課題
しかし、地権者が51人もいながらここまでうまくいく例は珍しい。私道整備の申請は、例えば西東京市では、2007年に27件、08年に18件あったというが、そのうちの3割程度は、住民が複数かかわったため合意が得られず、舗装工事だけで終えたものとみられる。
ちなみに、同市では、市内の道路の面積の約半分が私道。それらは、いつかはメンテナンスが必要になる。そのとき、住民自身がどう自治を進めるのか試されることになる。
