「猫への恩返し」
(本紙7/21号転載)
薬局などの前に置いてあるカエルのキャラクター、2代目「ケロちゃん、コロちゃん」(コルゲンコーワ)をデザイン。ほかに、NHKテレビ文学館のイラストを手掛けるなど、幅広く活動している。中でも、以前飼っていた三毛猫をモデルにした「ソクラテス」は、猫好きの間で人気のキャラクターだ。
「もともとは、1枚のポストカードから始まったキャラクターだったんです。ネコには、哲学者的な雰囲気があることなどから、哲学者の『ソクラテス』の名前をいただきました」
しかし、キャラクターとしての人気を確立する一方で、著作権を無視したコピー商品が氾濫(はんらん)。「ソクラテス」が誕生して8年目の1992年、自宅の敷地を利用したイラスト・猫雑貨ショップ「バティ」(西東京市下保谷4の16の28)をオープンする。
隣接する自宅では8匹の猫を飼っていることもあり、近隣の小学生たちからは「ネコ屋敷」として親しまれている同店。その半面で、捨て猫などを届けに来る人もいて、「よろず相談所」のような状況にもなっている。
94年からは「動物達の幸せを願う会」として、野良猫の援護活動をスタート。会員4人が交代で、毎晩エサを与えに町内を回っている。里親の募集も呼びかけており、最大30匹いた野良猫は、現在約3分の1にまで減っている。
「猫の絵を描いて生活している以上、猫のための活動をしなければ、と思いました。ごみを荒らすこともなくなりますし、避妊手術をして数が増えないようにしています」
苦い経験もある。雨の降る大晦日の夜、一匹の子猫を保護した。しかし、年の瀬ということもあり、受け入れ先が見つからず、やむなく手放すことに。冬の冷たい雨の中、何かを訴えるようにニャーニャーと鳴きながら去っていった後ろ姿が脳裏に焼き付き、離れない。
「私は、あの子を見殺しにしてしまったのかもしれない。今でも活動を続けているのは、あの子への懺悔(ざんげ)のようなものなんです」
野良猫の援護活動のほか、91年には近隣の森の伐採計画があることを知り、「保谷の森を守る会」を結成するなど、市民活動にも力を入れてきた。
「森や林は、この町に暮らす人たちにとって憩いの場所。絵描きである私にとっても、『絵になる』大切な情景なんです」
モットーは「情けは人のためならず」。猫や未来の世代に、巡り巡っていく。
「年を重ねるごとに、人から受けたものを還(かえ)していきたいという思いが強まってきました。猫や子どもたちのために、この地域を未来に誇れるものにしていきたいです」
◆くぜ・あきこ 1945年生まれ。長野県出身。イラストショップ「バティ」は午前11時から午後7時まで。営業日は、第1・3土曜、第3金曜。詳しくは同店(042・421・4179)へ。
