〈前回のつづき〉 現代の医学では自律神経失調症は治せません!
なぜならば、医学というのはどこまでも科学であって、常に数式による統計学 的真理を求めます。でも私たち人間は統計学で生きているわけではありません。 今、世界の療術に目を向けると、長い歴史のあるものならば必ずその中に優れた 長所を持っていること、そしてその大半は自律神経に働きかけるものだからです。
どの療術が一番優れているというものではなく、「療術に優劣なし」です。
それらの療術が互いに認め合い、力を合わせて病気に取り組んでいく。これが私の医療です。
それでは、自律神経失調症に、一般の人によく知られている療術の中から、効 果のあるもの、あるいはないものについて少し考えてみましょう。 深刺しの鍼治療、強圧の指圧・マッサージ、整体、カイロ、これらは一時的に
よく効くように思われますが、交感神経の過緊張を緩和する作用がありませんか ら、効果は無効と考えられます。
井穴の刺絡療法、かっさ療法、人体背部の吸角療法は、人により有効です。軽 めの指圧・マッサージも有効です。イトオテルミー、古典的浅刺の鍼治療は、よ り有効性が高いでしょう。ただし、これらの療術も術者の経験と技量を考慮する 必要があると思います。
(2012年2月15日)
現代医療は一定の検査をしてその所見から病名と治療方針が決まります。これ を「特定病因論」というそうですが、たとえば、自律神経障害ならば、検査に異 常が出てこない。本人は疲れやすい、体の異常なコリ、胸苦しさや、フラフラ感 など言い尽くせないような症状に悩んでいても、体自体に異常がないから「スト レスと上手に付き合ってください」と相手にされません。
でも、みんなそれが出来ないから苦しんでいるのです。鍼灸が効くと聞けば鍼 灸に通い、整体が効くと聞けば整体に通う。ところが不思議なことに、そこで良
くなる人もいれば、まったく効かない人も多い。それはなぜでしょうか。
自律神経は交感神経と副交感神経の二重支配を受けています。そして交感神経 の過緊張が続くと体にさまざまな症状をつくり出すことが知られています。つまり、交感神経の過緊張を緩和する作用が強い療術が最も効果的なわけです。
世界に数千以上あると言われる療術の中で、一般の人によく知られているいくつかの療術について、その有効性を検討してみましょう。
例えば疲労感や肩コリの多くは交感神経の過緊張によって生じますが、そのよ うな人が全身を強い力で指圧やマッサージを受けると、体が軽く楽になったと感じます。でも交感神経の過緊張は緩和されませんから、また元の状態に戻ってしまいます。つまり効果は一時的です。
鍼治療も、一般に行われている痛みやコリに作用する標治法という治療も効果 は同じです。では、どのような療術をどう使い分けるのが有効なのでしょうか。 《つづく》
(2012年1月18日)
新約聖書の中でイエスキリストが手を触れただけで多くの病人を治すという奇跡を行ったといいます。この手を触れて病気を治すという信仰的治療は世界中に数多く存在しています。
私はキリストの奇跡を信じる人間の一人です。クリスチャンであるならば当然「神の子」キリストの奇跡と考えるでしょうし、科学主義者ならばこれを暗示の一種と考えるでしょう。
私の「信じる」という立場はこのどちらでもなく、このような奇跡と言われる行為を行いうる人間は、特殊な「神の子」または「超能力者」であるのか、あるいはごく普通の人間でも行いうるのか。行いうるならばその本質は何か、です。
催眠暗示の場合、これを行う術者と受け手の間に情感という心の場で一つに結ばれた時、最も効果を表すのですが、聖書の中で病に苦しむ婦人は、大勢の人の陰に隠れ、衣服に触れただけでした。しかし婦人の「キリスト」への信頼から、催眠暗示では到底考えられない力が生まれました。 そしてキリストは自分が婦人を治したとは一言も言っていないのです、あなたの信仰があなたを救ったのだと。
これはとても重要で、人間の「心の力」が強力に働くとき、常識では考えられない自然治癒力が引き出されるのです。 追伸 鍼灸、マッサージ師を募集中です。お気軽にご連絡ください。
(2011年12月14日)
東洋医学の思想には「気」という重要な概念があります。東洋医療は漢方薬にしても鍼灸にしても、すべてこの気の思想の上に成り立っているわけです。
では、この「気」とはいったい何か。天気とか景気とか私たちが日常使っている言葉なのだけれど、この答えが難しい。
東洋医学では「気」を心と物質(体)を一つにするものと定義しています。物であるならば、物質としてのエネルギーであって、必ず容積を持っている。科学ではいまだ解明できない未知のエネルギー物質です。この可能性は十分にあります。
もう一つの考えは「気」という現象です。ユング心理学ではシンクロニシティという言葉があります。このシンクロニシティの定義を一言で言えば心と物質(体)を一つにすること、つまり気の定義とよく似ています。
ものかことか、物質か現象か、私には後者のように思えてならないのです。
追伸 当院では指圧マッサージ経験者、整体師を募集しています。お気軽にご連絡ください。
(2011年11月9日)
命より健康が大事、こんなジョークを言う人がいます。新聞やテレビに紹介された健康法は、片っ端から試してみる。あたかも健康が人生の目的であって幸福である。そんな健康オタクの人に、人は必ず死を迎える存在だ、などと言おうものなら、とたんにものすごく不幸な気持ちになってしまいます。
健康を仕事にしている私が言うのも変な話ですが、世の中に健康法を広め、それを実践した有名な人たちって、けっこう早死にしている人が多いんです。
命と健康は別のもので、ありもしない完璧な健康を求めて、逆に体の症状に不安を持ちながら生活している人もいれば、病気であってもけっこう元気で幸せに生きている人も大勢います。
「なんのための健康か」 ここはしっかり考えないといけません。
以前聞いた話に、一本のライ麦の苗を、砂だけを入れたハチのなかに植え、水だけで育てるのだそうです。養分なんかほとんど無い砂の中だから、どうみても健康とはいえない貧弱なライ麦にしか育たない。でも、その貧弱なライ麦は、生きるためにぎっしりと砂の中に根を張っていた。その長さを根毛の部分も含め1本の長さにして数えると、実に数万キロにも達していたというんです。
私たちが生きているということは、実は、想像を絶するほど広大なスケールで営まれていて、ありえないほど貴重なことだと思うんです。病気の苦痛を取り去ることは大切ですが、完璧な健康を求めてはいけない。そんなものもともとないのですから。
追伸、
「第8回東洋医学教室―家庭でできる指圧法」。11月6日から第1・第4日曜午後。講師は藤好なおみ・土居望。入会金1500円(教材費込)、月会費2000円。お気軽にお申し込みください。
(2011年10月12日)
(前回の続き)
私が当時、特効のツボの研究に着手した最大の理由は、今、現代人に多いさまざまな難治性の症状は、現在の医療では治療法がなく、無力であること。そうした症状を根本的に治す、簡単で効果的な特効ツボがあれば、原因不明の難治性の症状に苦しむ方が激減すると考えたからです。
具体的には、首の付け根の「天柱」、首の先端にある「肩井」は、特効ツボと言えるものです。このツボだけで改善される症状を少し挙げてみると、首を動かすとめまいがする頭位性めまい症、筋収縮性頭痛、片頭痛、動揺病、眼精疲労、肩こり、頸腕症候群、不眠、血圧の変動、動悸、立ちくらみ、メニュエール症候群、強い肩こりを伴う不安障害、パニック障害、仮面うつ病……それ以外にも多くの症状を改善します。
では、なぜたった2つのツボで多くの症状が改善されるのでしょうか。私たちの体は、無意識に自律神経の支配を受けています。別に首を打撲したわけでもないのに、首の皮下組織あるいは深部の軟組織に微細損傷することがあります。本人は肩こり持ちくらいに軽く考えているのですが、その状態が長く続くと、自律神経の交感神経過緊張が続くことになります。その交感神経過緊張が、全身にさまざまな症状を作り出すわけです。
このような頚部の挫傷の症状であれば、健康保険による治療もできますのでお気軽にご相談ください。
(2011年9月14日)
人体には365のツボがあるといいます。この365が人体の代表的ツボとされますが、実はほかにも奇穴とか新穴とかいろいろあって、その数はおよそ数千もあります。若き日の私にはその一つ一つのツボが本当に効くとは到底思えませんでした。
代表とされる365のツボだって、一年の日数になぞらえたものですし、経絡というツボの流れが12なのも一年の月数です。
これは東洋医学の理論を形成するうえで大切な意味を持っているのですが、大多数のツボは数合わせに取って付けたようなもの。私たちが知りたいのは、本当にズバリと効くツボはどこか!誰がやっても家庭で素人がやってもこのツボなら確実に効く、ということです。それをまとめてみたい。
若い頃私はそんなことを考えていたようです。当時の研究ノートを見ると、数あるツボの中で私が効くと判断したツボは、昭和57年の時点で9つ。2年後の59年には31に増えていますが、その3年後、62年には24のツボに減っています。これには相当気落ちしたようで、特効ツボの研究はここで終わっています。
いま、当時の記録を見てみると、私自身、驚くほど真剣にまとめられていることに気づきます。数千の中の24のツボは、あまりにも少ないものでしょうか。いまの私は、24の特効ツボが12でもあるいは6つでも良いと考えています。なぜならば、確かな一つの特効ツボで大勢の人の苦痛を救えるのですから。
(2011年8月24日)
念力でスプーンを曲げられるか、未来は予知できるか、死んでから心はどうなるのか、テレパシー、念力、予知能力など、超常現象と呼ばれるものはさまざまです。
私は、本紙コラムをまとめた著書『東洋医学ノート』(法研)の中でこのような問題を提示しました。
それは一部のオカルト好きな人の興味を除けば、超心理学の研究分野に属しているものです。
――ツボや経絡と、超心理学――この異なる領域を結ぶ、中間的位置に、私は気功があると考えています。
外気功、遠隔気功は、超心理学のESP(Extrasensory perception)超感覚的知覚、PK(Psycho kinesis)念力、に近いもののはずです。
人間と世界という関係を、「気と人体」という視点に立って考え直してみると、東洋医学のツボや経絡は人体の内側の健康と気の働きの研究分野です。
気功研究は人体の内側と外側における気の働きに着目しています。超心理学は、人体と環境という気の働きにかかわっています。これらの領域を統合した視点から人間とその心理を捉え直すならば、新しい側面の東洋医療が可能になることでしょう。
(2011年7月13日)
先日、北海道にいる長男からめずらしくメールがありました。内容はといえば「良い情報を教えよう。天体物理学者がシミュレートした宇宙の構造で、星が互いにクモの糸のように繋がっている様子は、神経細胞ニューロンが互いに繋がっている様子とほとんど同じだったらしい。脳細胞の構造は宇宙の構造と同じなのだ」とだけ書いてあります。
なんとも唐突なメールなのですが、実はこの話、私が若いころ東洋医学の中で最初に描き出した生命のイメージです。そして、今それは脳と宇宙だけではなく、世界のあらゆる存在は同じように繋がり合っている、これが東洋医学の「天人合一説」であり、今風に言うならば、ホログラフィーパラダイム(部分は全体を含む世界観)です。
さて、生命とはいったい何か、それは躍動であり繋がりであり変化であると私は思うのです。ツボも経絡も東洋医学の理論はこうした中から生まれました。だから死体にツボはありません。
生体を物質として、死体解剖から生命のしくみを知ろうとする西洋医学には東洋医学は理解できないのです。
(2011年6月8日)
数カ月前の夜、突然激しい腰痛が襲ってきました。寝床につこうと思っても、まったく体を動かすことができません。上体を起こそうとすると痛みのためか、意識が遠くなる気がしました。体を1センチ動かすだけでも激痛が走る。生まれて初めて痛みに恐怖を感じました。まいった!
明日も仕事がある、これではむりだ……。指圧や整体などできる状態ではないので、しぶしぶ、鍼のできない家内に、腰のココとココの部分に鍼をしてくれるかと頼みました。家内は私の痛みの強さに気付いていないようで、鍼打ってもいいの?とうれしそうにニコニコしながら、私の腰に鍼を「ぷすっ」(!)。どうもその鍼が痛覚の受容器 (痛みの感覚器)に当たったようでした。
「ギャッ」。腰の痛みと鍼の痛みで、這ってゴキブリのように逃げようとする私を、家内は上から押さえつけ、あなた人には平気で鍼してるんでしょ。
私は下手くそな人間の鍼はこんなにも痛いのかと心の中で叫びながらも、もうグウの音も出ない。家内は楽しそうに笑っている、私は笑いながら泣いていました……。
幸い、痛い鍼は最初の1本だけで、腰はだいぶ楽になり、仕事もなんとか無事にこなすことができ、痛みも日に日に楽になっていきました。
人間、体の痛みも心の痛みも、人の痛みは分かりにくいものです。病人にはやさしく接しなければならない! 身をもっての体験でした。
(2011年5月12日)
三十一、直観力
将棋のプロ棋士には、普通の人には見られない脳の神経回路があるといいます。一つは脳の頭頂葉にある「楔前部(けつぜんぶ)」という所、もう一つは「尾状核」という所で、楔前部は空間イメージを形成するときに、尾状核は体で覚えた行動をするときに活性化されます。この二つの脳の領域が連動して棋士の思考が生まれているそうです。
理論的には答えの導き出せない難解な局面でも、瞬時に正しい答えを導き出す。実はこの直観力、棋士は将棋に応用しているわけで、なにも棋士だけの能力ではないのです。
長年病気を患っているあなたの中にも、実はちゃんと芽生えています。だからあなたの症状が原因不明でも、たとえ優れた医者がどのように言おうとも、まず自分自身の中に生じる感覚がどうか(今の治療はこれで良いのか、あるいは悪い のか)その直観を信じたほうが良いと思うのです。
医学というものは、科学であって統計学的真理を求めます。しかし私たちはまったく個別な環境に生きている存在です。私なんかだと、医学では休みなさいと言われる状態のときも経済学がそれを認めてくれません。そうしたなか、自分の病をどう治めるか、それには医学だけでなく直観に頼ることも大切な一つの手段なのではないでしょうか。
(2011年4月13日)
鍼治療でも、整体治療でも、世の中には名人と呼ばれる人がいるものです。どんな病気でも、あの先生にかかれば「あっ」という間に治ってしまう。まさに神の手といわれる人たちです。
そういう人たちには、共通した一面があることに気づくのですが、つまり、すぐ治せる病人は治療するが、そうでない病人には手を出さない。だから神の手と言われているのに、結構暇に生活して遊んでいる人も多い。
人間の病気というものは、どんな病気でも一つの運命のようなものがある。ある程度経験を積んだ治療家であれば、その人の症状を聴いて状態を診れば、その場でその病気のこれからの経過はだいたい予測できているわけです。
それは、症状の強弱とはあまり関係なくて、今、その人の状態がその病気の中でどのような位置にあってどの方向性を持っているかそれが重要なんですネ。
これからどんどん進行しそうな病人には、名人は手を出せない。私なんかは逆に進行しそうな病気の運命を変えられないものかと、口からぶくぶく泡を吹きながら悪戦苦闘しているわけですから、名人、神の手、といわれる人とは正反対の治療家なんです。
(2011年2月9日)
タウン通信のコラム「医針伝心」が3年という長い道のりを経て、一冊の本になりました。
本のタイトルは『東洋医学ノート』。なんとも地味なタイトルですね。出版社は法研で明日発売です。家庭で出来るツボ療法という簡単な書物(安直に書き上げれば数日であろう)に3年という時間を要したことは私自身もあきれてしまうのですが、そこにはどうしても譲れない一つの想いがあったからです。
今書店に行けば、各種健康法の書物から、東洋医学のツボ療法に至るまで、世の中全体が健康ブームに沸き上がっている感がします。しかし、どの書物を巡ってみても、中身はいわゆる安直なHOW TOものばかりです。このようなことが常識という大嘘の渦の中で、健康という幻想! そしてツボとはいったい何か! 真実の東洋医学はどのようなものなのか!それをほんの少しでも、誰にでも分かりやすい言葉で一般の読者向けに書きたかったのです。
時代の流れに逆らいながら発売される私の『東洋医学ノート』は、おそらく人の目に留まることなく消えてゆくことでしょう。たぶんそのことを知りつつも、今までにない異色なツボ解説書として販売に踏み切っていただいた出版社。そして何よりも3年前、私のコラムを本にしてみないかと原稿を最初に編集し、多大な力を注いでくださった現タウン通信社長の谷隆一氏には心から感謝の思いでいっぱいです。
◇
※追伸、『東洋医学ノート』は書店での取り寄せかインターネット通販になりますが、近隣にて販売される書店は以下の通りです。
西東京市▼博文堂書店田無店、リブロ田無店
東久留米市▼やまもと書店駅ビル店、野崎書林、スターブックス、ブックセンター東久留米、ブックセンター滝山、ブックセンタークルネ
小平市▼オリオン書房。花小金井では「Books Hanako」
東村山市▼ブックセンター東村山
(2011年1月26日)
動悸やめまい、頭痛、首・肩の異常なコリ、全身のコリや痛み、胃腸症状、疲労感、手足の冷えや低体温、微熱etc……実際に症状があって苦しいのに、検査では何の異常もないと言われる人は多いと思います。それはなぜでしょうか。
私たちの体は、自律神経によって無意識のうちに調節されています。その神経は交感神経と副交感神経の二重支配を受けているわけですが、中でも交感神経の緊張が長時間持続すると、体にさまざまな不定愁訴が現れてきます。
コリ症状(肩や背中のコリ)などは交感神経過緊張が作り出す反射症状の代表と言えるでしょう。今あなたがさまざまな症状に悩まされているならば、大切なことは症状の一つひとつを追いかけないことです。例えば、肩コリと胃腸症状、めまいなどを別々なものと考えてはいけません。なぜならば、症状を作り出す原因は別なものではく、交感神経の持続的過緊張状態一つだからです。
今もっともつらい症状は何か。いちばん治しやすい症状は何か。それだけに絞って治療してほしいのです。一つの症状が改善することで、交感神経の過緊張も緩和され、そのまま全身症状が改善されていくからです。
(2010年12月8日)