2017.07.27 コラム

 

 

 

 

 幸福のケサランパサラン

文 ・ 志賀 泉

 

みなさんはケサランパサランをご存じだろうか。知らない? おそらく大多数の人は知らないのではないかと思う。

 

ある日、女房から「幸せを呼ぶケサランパサランを捕まえたよ」と絵文字入りのメールが届いた。ちなみに私の女房は見事な満月が出ていたり虹が架かっていたりすると、わざわざ携帯電話で教えてくれる人である。

 

はて、ケサランパサランって何だっけ?

 

早速、ネットを使って調べてみた。すると「幸せを呼ぶ?」「未確認生物」「江戸時代以降の民間伝承上の謎の生物」「おしろいが食べ物」などと胸躍るような言葉が次々と出てくる。ネット情報なのであまり当てにはならないだろうが、女房が珍しいものを捕まえたのは確かなようだ。(ここで私は以前、ケサランパサランを取り上げたNHKの番組を観たことがあると思い出した。ケサランパサランの正体はたしか植物の種子だった)

 

さて、帰宅した女房が見せてくれたのはまさしくそのケサランパサランだった。イメージはタンポポの綿毛に近い。ただし綿毛の一本一本がタンポポより長く繊細で、軽い。少しの風でふわふわと舞う姿は確かに生き物のようで、なるほど、おしろいを食べていそうな雰囲気がある。昔の人の想像力は大したものである。

 

飼っている(?)と願いが叶うということなので、我が家ではワイングラスの中で飼っている。願い事はいろいろあるが女房が捕まえてきたものなので女房が健康でいればいい。女房が健康であれば僕の個人的な願い事も叶いそうな気がする。

 

伝承だろうが空想だろうが、そういうものが我が家にあるということはとにかくいいことである。

 

ケサランパサランの写真

写真撮影:志賀泉

 

(小説家。福島県南相馬市出身。近著に『無情の神が舞い降りる』〈筑摩書房〉、代表作に『指の音楽』〈同、太宰治文学賞受賞作〉、『TSUNAMI―つなみ―』〈同社〉)