2018.05.15

編集長インタビュー

 

「ルネは “幸せ”に出会える身近な場所」

    小平市文化振興財団 

        事業課係長 玉井文子さん

 

 小平駅そばの「ルネこだいら」が、開館25周年を迎えている。市民に愛される「市民ホール」であるために、どのような工夫や企画がなされているのか。開館時から25年間、企画にかかわり続けてきた、同館の玉井文子さんを訪ねた。

 

 

 

——25年前の開館時から勤務されているそうですね。

 

「テープカットなどの式典を思い出します。こけら落とし公演は、市民で合唱団を結成しての『第九』でした。このときの感動から、市民合唱団は毎年結成されるようになっています。25年の間でさまざまな曲に取り組んできましたが、今年は再び『第九』をやります。ちょうど今、団員を募集しているところです」

 

 

——そのようなルネ独自の活動は、ほかにもありますか?

 

 「かつての中核事業だったのは、小平市にお暮らしだった世界的なバイオリニスト・江藤俊哉さんのご協力で続けた『ヴァイオリンコンクール』です。これは11回実施し、多くの優秀な人材を輩出しました。受賞者には、今も年に1、2回、当館の自主公演に出演してもらっています。今年は9月のランチタイムコンサートで出演の予定があります。

 

 最近では、吹奏楽を盛り上げようと力を入れています。市内に、全国トップレベルの中学校が複数あることなどが大きなきっかけになっているのですが、3月に『吹奏楽フェスティバル』を実施して、定着してきています。

 

 また、東京郊外という特性から、地域に暮らすご高齢者や、子育て中のお母さん方を意識した企画を多く組んでいます。

 

具体的には、お勤め帰りにふらっと寄れる午後7時30分からの『1hourコンサート』や、500円で鑑賞できるランチタイムコンサート。毎年8月の最終日曜日には、全館をあげて『夏休みフェスタ』も実施しています。これは子どもたちが文化や芸術に触れ合えるようにと、10年以上前から続けてきているものです。

 

 

 ——ハード面での特徴もありますよね。エントランスロビーには、市ゆかりの作家の彫刻作品が飾られています。

 

 「平櫛田中さんと斎藤素嚴さんのブロンズ作品が展示されています。そのほかにも、大ホールの緞帳は2枚あるのですが、それぞれ、東京芸術大学名誉教授で文化功労者でもある洋画家・絹谷幸二さんと、日本画家・牧進さんによる作品です。特に絹谷さんの作品は、小平の町をイメージしたもので、よく見ると、市内に技術センターのある『ブリヂストン』や、市役所、遠くには新宿の高層ビル群などがあるのが分かります。

 

 また、大ホールのロビーには、砂畠睦子さんによるタペストリー、屋外には半田富久さんのモニュメントなどがあります。こうした芸術にも触れていただければと思います。

 

 

 

 ——こうした市民ホールの意義は何だとお考えですか。

 

 誰でも、ライフサイクルの中で地域とかかわる時期がありますよね。ご高齢であったり、子育て中であったり。そのときに、気軽に行ける音楽会や舞台公演がある、というのが大事なのだと思います。

 

 私自身も経験がありますが、小さな子どもを連れて移動するというのはすごく消耗するものです。子どもも疲れてしまって、せっかく音楽会に連れて行っても公演中眠ってしまっている……ということにもなってしまいます。その点、地域のホールなら移動の負担が少ないし、足の悪いご高齢者などもタクシーなどで気軽に出掛けられます。

 

 それともう一つ。地域のホールには、文化・芸術と市民との接点を生み出す役割があるのだと思います。ルネでは、市内の小学校への『出前コンサート』というのを年に6校ずつ行っているのですが、ある先生からこう言われたことがありました。

 

『もしかしたら、バイオリンの生の演奏を聞くのは今日が一生に一度の機会、という子もいるかもしれません。だからこそ、この機会をつくってくださったことに感謝しています』

 

さまざまなお子さんがいるという示唆だったのですが、どんなお子さんであれ、生の音楽を聞く機会を持ったことで何かが心に残ればいいな、と思います。そして何年か後でも、ふっと思い出して、ルネに足を運んでくれたなら、こんなうれしいことはありません」

 

 

 ——特にクラシック音楽などには、敷居の高さを感じている人も多いのかもしれませんね。

 

 「確かに人気の音楽会は、チケットが数千円から1万円を超えるものもあります。ですが、中には、とても安価だったり、無料のものもあるのですよ。無料のものだと、例えば、陸上自衛隊の音楽会や消防庁音楽隊などはとてもレベルが高いです。

 

 また、500円のランチタイムコンサートでは、実力派の演奏家を招いています。

 

 さらに言えば、市民の方が主催する公演などは、無料や1000円程度で鑑賞できます。『アマチュアなんて…』と思われるかもしれませんが、実はアマチュアの公演にはプロとは違う魅力がたくさんあります。例えば、恒例プログラムとなった吹奏楽フェスティバルですが、これは3月の公演でもあり、そのメンバーで演奏する最後の機会となっています。特に3年生は、卒業後の進路でばらばらになりますから、最後の演奏にかける思いが強い。そうした子どもたちの気持ちは、見ていてすごく伝わってくるんです。聞いていて、ぐっときますよね。感動します。

 

 そういうさまざまな公演が、ここでは日々開かれています。情報はプログラムチラシやホームページなどで発信していますが、『友の会』という特典豊富な会員制度もあるので、ぜひご入会いただきたいです。情報をより入手しやすくなりますので」

 

 

 ——25周年です。

 

 「今年は、『祝祭感のあるもの』『吹奏楽』『子育て世代の来館を促す』の3つを柱に、さまざまな企画をつくりました。

 

25周年記念としては、今後では、スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団(6月)、ロシア国立サンクトペテルブルク アカデミーバレエ(12月)を予定しています。海外のオーケストラなどを呼ぶのは容易ではないので、これは力を込めた企画です」

 

 

 ——玉井さん自身も、ここに勤務して25年ですね。

 

 「個人的なことで恐縮ですが、ここはとても良い職場だと思っています。出会いが多いですし。

 

 アーティストの方たちって、基本的に皆さん、幸せそうなんですね。エネルギーのある方が多いです。市民の方々も、何かを求めてここにいらしていて、生きるのに積極的な感じがします。ここは、そういう幸せが出会う場所なんだと感じています。

 

 その中で仕事をしていて、さらに来館者から、『今日の音楽会はとても良かった。明日からまた頑張れる!』といったお声をいただけます。やりがいを感じる瞬間ですね」

 

  • 玉井文子(たまい・あやこ) 1993年10月、小平市文化振興財団に就職。現在、事業課係長として、企画立案などに関わっている。

 

◆小平市ルネこだいら 小平市民文化会館として、1993年11月21日に開館。1229席を持つ大ホール、通常401席の中ホール、レセプションホール、和室、会議室、展示室などがある。年間約60回の自主公演のほか、市民利用による催しがほぼ毎日開かれている。

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ルネ小平 小平市市民文化会館