2018.07.19 この町この人

[この町この人]「腹が立つことも、自然体で」俳優・声優 常田 富士男さん(西東京市在住)

 

 

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映画「天空の城ラピュタ」のポムじいさん役などで著名な俳優・声優。30年ほど前から西東京市に暮らしており、この25日(土)、26日(日)には、保谷こもれびホールで開催の「平和を祈る演劇祭」に特別出演する。


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平和への思いは人一倍強い。終戦を迎えたのは小学2年生。その1年前に父が南方で戦死した。認めたくない思いもあって、戦後も友達に「お父さんは、ちょっと南のほうにいるんだ。そのうちバナナを送ってくるよ」などと見栄を張った。

 

そんな挙げ句についたあだ名が「嘘つき富士太郎」。鬱々した思いを抱えた十代だったが、転機となったのは、偶然見た演劇だった。

 

「おれも舞台に立って思いっきり、むずむずした思いを表現したい!」

 

高校卒業後に上京し、劇団民藝へ。仲間と劇団を作った時期もあった。

 

全国的に名が知られたのは39歳。市原悦子とともにテレビ番組「まんが日本昔ばなし」の声優に抜擢された。二人ですべての役をこなす仕事。ところが、前週土曜に送られてくる台本には、配役が記されていなかった。

 

「毎週火曜の収録のとき、スタジオで初めて指示されるんです。労働歌もよく出てくるのですが、あれもぜんぶ即興。リズムから何から好き勝手に。23年間同じスタイルでしたが、毎回わくわくして臨んでいました」

 

番組はテレビ史に残る名作だが、「満足感とか達成感はない」と振り返る。最近、一時期の多忙から解放され、ようやく地元での活動にもぽつぽつ取り組めるようになった。

 

3年ほど前には、在家僧侶の資格を取得。朝晩読経し、特に、法華経の精神を反映していると言われる宮沢賢治の『雨ニモマケズ』を好む。

 

「一音一音伸ばして読んでいくと、イメージが膨らみ、時間の味わい方が毎日変わる。雨の情景も日々変わって、激しいときもあれば、しとしと降るときも。それでいいと思うのです。自然体で」

 

1977年には旧保谷市長選挙に立候補したこともある。少年期のつらい体験もあり、政治への関心は持ち続けてきた。

 

「人はいつだって、悲しいことや腹が立つこと、幸せについて話していたいのだから。そんな話は窮屈だと言われそうだけど、そんなことはない。全然窮屈じゃないよ」

 

ときた・ふじお 1937年長野県生まれ。日本アニメ大賞声優部門特別演技賞、モービル児童文化賞を受賞。

 

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「平和を祈る演劇祭」では4演目を上演。常田さんは、レイモンド・ブリッグズ原作『風が吹くとき』より、「ヒルダのレタス畑」の朗読をする。

          (2015年7月22日記事)