2019.01.23

西東京市に長く暮らした名俳優 常田富士男さん孫娘が追悼公演

 

孫・みさ希さんに読み聞かせをする在りし日の常田富士夫さん=みさ希さんが3歳の頃、常田さんの自宅で

 

亡き祖父への“答え”を舞台に   
2月・池袋で

 

「まんが日本昔ばなし」のナレーションや「天空の城ラピュタ」のポムじいさん役などで知られ、西東京市に長く暮らした俳優・声優の常田富士男さんの追悼公演「カンガルー」が、2月に池袋で開かれる。主催は常田さんの孫で、同市出身の女優・市村みさ希さん。常田さんと親交のあった俳優や、希望しつつも共演が叶わなかった俳優らに呼び掛け、メンバーを募った。生前、孫娘の舞台活動を望んでいた常田さん。市村さんにとって、3年半ぶりの舞台復帰作となる。

 

「みさ希はもう、芝居をやらないのか?」――生後間もない頃に見つかった腎臓疾患を抱えながらも、幼少時から舞台に立っていた市村さん。2009年、腎臓移植をするも、17年から人工透析を受けるようになり、舞台活動は次第に日常から遠のいていった。舞台活動を応援してきた常田さんは、孫娘の体の状態を知りつつも、エールを送るように幾度となく同じことを聞いた。

 

「うやむやな返事しかできないでいるまま、昨年の7月に祖父は亡くなってしまいました。その日の夜、祖父の携わっていた舞台の戯曲を読みたくなり、手に取ったのが『カンガルー』(作:別役実)。母(常田さんの長女)が幼い頃、祖父が主演を務めた演劇企画集団66の同舞台を観て印象に残っていたようで、『みさ希にも読んでみてほしい』と渡された本です」

 

「カンガルー」は、不条理劇の作家として知られる別役実さんによる音楽喜劇。主人公である一人の若者の、孤独と生き様を描いた作品だ。常田さんが座長として活動していた演劇企画集団66は、別役実さんの書き下ろし作品を上演する劇団。常田さんにとって、別役実作品はライフワークだった。
    

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 通夜で、祖父の遺影に目をやる。そこには、市村さんを見つめ返す常田さんがいた。祖父から何度も聞かれた言葉が脳裏をよぎる。うやむやにしていた質問への返事を、しようと決めた。

 

3年半ぶりの舞台復帰。今作では自身初の演出も務める。公演を主催するのも初めての経験だ。追悼公演を行うに当たっては、常田さんが養成所に通っていた劇団民藝の俳優、「いつか一緒に芝居をしよう」と声を掛けつつもかなわなかった役者などを中心に出演を依頼。プロの俳優が多数を占めるなか、初舞台を踏む者もいる。

 

  稽古中の市村さん(左)

 

「祖父が舞台の主催をすると、舞台に初めて立つ方を何度も起用していました。私自身、演劇の原点は祖父なんです。まだ幼稚園に通っていた頃、祖父の企画した舞台で初めて板の上に立ちました。そうして、舞台の魅力を肌で感じたのです」

 

体調に不安がないわけではない。俳優だけではなく、主催・演出としての役目がある分、やるべきことは多いが「祖父が大切にしてきた別役実さんの芝居を上演できることが何よりの原動力。共演者やスタッフの方は、常田さんが再び舞台に導いてくれたんだね、と言ってくださるんです」と話す。

 

「元気だった頃の祖父母は、年末になると親族や友人、役者仲間や舞台関係者を呼んで餅つき大会をしていました。祖父が設計した西東京市の自慢の家には、人がぎっしり。たくさんの人に慕われている祖父母の姿を見るのが、私は大好きでした。今回の舞台で、そんな光景を再現できたらうれしいです」

 

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舞台は2月1日(金)から3日(日)まで、池袋シアターKASSAI(豊島区東池袋1の45の2)で。1日・2日は午後6時30分から(※2日午後2時の回は完売)、3日は正午と午後4時30分から。4500円(前売り3500円)。

 

詳しくは演劇企画ニガヨモギ(080・5531・0339 kikaku_nigayomogi@yahoo.co.jp)へ。

 

(取材・石川裕二)

 

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市村みさ希さん

 
西東京市出身。幼少時から舞台女優として活動。
本公演を行うにあたり、演劇企画『ニガヨモギ』を立ち上げた。
俳優・常田富士男さんの孫

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