重症化まで気づきにくい新たな国民病  「およそ1300万人が患う 慢性腎臓病への対策とは」 武蔵野徳洲会病院院長の鈴木洋通先生に聞く

「新たな国民病」ともいわれる慢性腎臓病(CKD)。65歳以上の3割以上が罹患し、進行すると人工透析や腎移植が必要となる場合もあります。

「沈黙の臓器」と言われる腎臓は、重症になるまで自覚症状が出にくい特徴があるため、日頃からの注意が不可欠です。

腎臓内科の専門医で、総合内科医でもある武蔵野徳洲会病院院長の鈴木洋通先生に聞きました。

鈴木 洋通 先生  武蔵野徳洲会病院 院長 腎臓内科 日本腎臓学会認定専門医・指導医 日本透析療法学会認定医・指導医

 

腎臓は自覚症状が出にくい「沈黙の臓器」

――まず、腎臓の役割から教えてください。

「簡単に言うと、体のろ過器です。

よく知られるように、尿をつくり、水分とともに老廃物や毒素などを体外に排出していきます。そのほかにも、体内の水分・塩分のバランス調整や血圧のコントロール、さらに、赤血球をつくる働きを助けるホルモンを分泌して貧血を防いだり、ビタミンDを活性化して骨を丈夫にするなど、重要な働きをしています」

 

――腎臓病にはどのようなものが?

「臓器自体が悪くなるものと、糖尿病や高血圧などによるものとがありますが、慢性のものを総じて『慢性腎臓病』(CKD)と呼んでいます。成人の約8人に1人にその疑いがあると言われていますが、腎臓は自覚症状が出にくいため、気づかずに病気が進行してしまう人がたくさんいます。

怖いのは、むくみや倦怠感、貧血、息切れなどの典型的症状が現れる頃には腎機能低下が高度に進んでしまい(下図のG4・G5レベル)、気づいた時には人工透析や腎移植が必要――となるケースが少なくないということです。

また、腎臓の働きが正常の60%以下になると心筋梗塞や脳卒中のリスクも高く、これらの急性症状で亡くなる方も見られます。

腎機能が低下するということは代謝が悪くなるということですから、あらゆる臓器に悪影響が出てしまいます」

腎臓の働きのレベル

 

尿タンパク、尿潜血は腎臓疾患のサイン

――症状が出にくいということですが、早期発見するにはどうすればよいのでしょうか。

「健康診断などの尿検査で『タンパクが出ている(尿タンパク)』『尿に血が混じっている(尿潜血)』と言われたら、軽く考えずに、すぐに腎臓の専門医にかかることが大切です。これらは腎臓疾患のサインです。

腎臓には、毛細血管がモール状に集まった『糸球体』と呼ばれる塊があり、そこで血液をろ過しているのですが、尿タンパクはこのろ過機能が低下していることを示しています。また、尿潜血の大半は、糸球体が壊れているために起こっています。

腎臓の状態を示す値として『eGFR』という言葉をご存じの方は多いかと思いますが、eGFRというのはこの糸球体のろ過量のことです。eGFR値は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のほか、加齢も低下要因の一つです」

 

――慢性腎臓病の治療はどのようなものになりますか。

「残念ながら、今の医療では、悪化した腎機能を元に戻すことはできません。

誰もが加齢とともに腎機能は低下していきますが、年齢以外の要因を取り除いて低下のスピードを加速させないことが治療の目的となります。

症状を緩和する薬はありますが、機能低下を防ぐ薬はありません。

そして、腎機能がほとんど失われてしまった場合は、命を守るために人工透析や腎移植を選択していくことになります」

 

腎臓への負担要因を知っておくこと

――人工透析や腎移植にならないためにはどうすればよいですか?

「腎臓はかなり進行してからでないと症状が現れにくいため、定期的に健康診断を受け、eGFR値や尿に異常がないかなどをチェックしていくことが大切です。

また、高血圧や糖尿病などの『生活習慣病』や動脈硬化は腎臓病のリスクとなりますので、そうした病気の予防と治療もポイントとなります。

食生活の見直しも必要です。特に注意するべきは『塩分』。塩分の摂り過ぎは腎臓に負担をかけます。

それからもう一つ。

実は、みなさんがびっくりするような話をしなければいけません」

 

――何でしょうか?

「過度な医療機関での受診と服薬が腎機能低下の要因となる場合がある、ということです。

もちろん、病気治療のために必要なときはしっかり受診・服薬すべきです。ただ、むやみに受診すると、不必要な検査や服薬につながることがあります。

例えば、同時期に異なる病院で同じ目的の画像検査を複数回受ける方がいますが、検査で用いる造影剤は腎臓に負担となることがあるので、不必要に繰り返すのは危険と言わざるを得ません。

また、薬は服用の目的を意識すること。症状改善などの目的を達したら、飲まなくても良い薬もあります。

数種類の薬を常用せざるを得ない方もいますが、『これは減らせないか?』などを担当医に相談していくことも大切です」 

【取材協力】
武蔵野徳洲会病院


2015/6/3

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