加齢黄斑変性といわれたら

街かど診療室

保谷伊藤眼科・伊藤勇院長のコラム

黄斑部の後の脈絡膜が破綻してきて、変性を起こしていく状態を加齢黄斑変性といいます。その病期により、治療は変わってきます。

加齢黄斑変性の前段階では、網膜ドルーゼンという脈絡膜からの滲出物が多く見られます。その状態では、ルテインの摂取をした方としない方で約4倍の発症率の差が出ました。

欧米では、加齢黄斑変性が中途失明率の1位であることから、大きな社会問題であり、積極的にルテインを摂取する方向です。

 

治療法は……

歪視などが発症して、新生血管が膨隆、血液漏出などが始まってきたら、抗血管新生促進因子抗体(抗VEGF抗体)を眼内に注射する治療が数年前から始まりました。

ただし、治癒というよりは進行を防ぐための治療です。また薬剤の費用が高いのが欠点です。

 

積極的に治療を受けてほしい

新生血管を抜去する手術もありますが、治療成績が安定していないこともあり、現在は眼内注射がメーンの治療。脈絡膜自家移植という方法があり、イタリアの硝子体手術グループがその治療成績を発表していますが、全く効果がない方もいるし、治療が奏功した方もいるという状況です。

自家移植ではなく、先日行われたiPS細胞による脈絡膜シートを移植する方法は、現時点で適応基準が難しく、培養シート作成などにかかる費用が2000万円以上ということで、まだまだ乗り越えなければならない壁は多い状況ですが、希望が見えてきています。

積極的に治療を受けていき、失明の危機を乗り越えることが重要です。

 

プロフィール

伊藤 勇

「保谷伊藤眼科」院長。大学病院で最先端の眼科医療に携わった後、同院を開業。白内障等の日帰り手術のほか、網膜硝子体疾患手術、緑内障手術、眼科一般診療などを幅広く行っている。公式ホームページ:http://www.itoganka.com/

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