幸福のケサランパサラン

猫 耳 南 風

太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム

 

みなさんはケサランパサランをご存じだろうか。知らない? おそらく大多数の人は知らないのではないかと思う。

* * *

ある日、女房から「幸せを呼ぶケサランパサランを捕まえたよ」と絵文字入りのメールが届いた。ちなみに私の女房は見事な満月が出ていたり虹が架かっていたりすると、わざわざ携帯電話で教えてくれる人である。

* * *

はて、ケサランパサランって何だっけ?

早速、ネットを使って調べてみた。すると「幸せを呼ぶ?」「未確認生物」「江戸時代以降の民間伝承上の謎の生物」「おしろいが食べ物」などと胸躍るような言葉が次々と出てくる。ネット情報なのであまり当てにはならないだろうが、女房が珍しいものを捕まえたのは確かなようだ。(ここで私は以前、ケサランパサランを取り上げたNHKの番組を観たことがあると思い出した。ケサランパサランの正体はたしか植物の種子だった)

* * *

さて、帰宅した女房が見せてくれたのはまさしくそのケサランパサランだった。イメージはタンポポの綿毛に近い。ただし綿毛の一本一本がタンポポより長く繊細で、軽い。少しの風でふわふわと舞う姿は確かに生き物のようで、なるほど、おしろいを食べていそうな雰囲気がある。昔の人の想像力は大したものである。

* * *

飼っている(?)と願いが叶うということなので、我が家ではワイングラスの中で飼っている。願い事はいろいろあるが女房が捕まえてきたものなので女房が健康でいればいい。女房が健康であれば僕の個人的な願い事も叶いそうな気がする。

伝承だろうが空想だろうが、そういうものが我が家にあるということはとにかくいいことである。

 

プロフィール

志賀 泉

小説家。代表作に『指の音楽』(筑摩書房)=太宰治文学賞受賞=、『無情の神が舞い降りる』(同)、『TSUNAMI』(同)がある。福島県南相馬市出身。福島第一原発事故後は故郷に思いを寄せて精力的に創作活動を続けている。ドキュメンタリー映画「原発被災地になった故郷への旅」(杉田このみ監督)では主演および共同制作。以前、小平市に暮らした縁から地域紙「タウン通信」でコラムを連載している。

編集部おすすめ

1

レストラン+食材販売 小平駅そば「ビストリア小平」 新型コロナウイルス感染症に伴う最初の緊急事態宣言が出てからちょうど2年。特に飲食業は厳しい状況に直面してきた。そんななか、新しいスタイルの店が小平で ...

2

武蔵野美術大学鷹の台キャンパス内にある「武蔵野美術大学美術館」で、4日から、「令和3年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作 優秀作品展」が開催されている。 同大学・大学院の卒業・修了制作作品の中から特に ...

3

二十四節気の清明(5日)、穀雨(20日)とつづく4月は、日の入り時刻も6時台となって、いよいよ陽の気が濃厚になってきます。 17日には春の土用に入り、季節は春から初夏へと変わろうというころ。 世の中は ...

4

猫 耳 南 風 太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム ウクライナの兵士と握手したことがある。二〇一七年秋、チェルノブイリ・ツアーに参加した時のことだ。 彼は高線量地帯にある幼稚園の廃墟に立っていた。旅行 ...

5

各市で2022年度予算案の審議が始まっている。今年の取り組みを決める重要な議会になるが、北多摩各市の予算案を見比べると、今のトレンドが見えてくる。今年の傾向は、ゼロカーボンとDX(デジタルトランスフォ ...

6

清瀬市郷土博物館の民俗展示室が先日リニューアルされ、国の重要有形民俗文化財の「清瀬のうちおり」が常設展示されるようになった。 「うちおり」は、農家の女性たちが、売り物にならない屑繭や残糸などを活用して ...

7

在宅診療NOW まつばらホームクリニック 松原清二院長のコラム 先日埼玉県ふじみ野市で若い在宅医の尊い生命が奪われてしまいました。 被害にあった鈴木純一先生とは私も一度食事をしましたが、大変明るく、一 ...

Copyright© タウン通信 , 2022 All Rights Reserved.