『送る想い』学んだ3日間 青嵐中の2人 田中葬祭で職場体験

人を弔う重みを感じて――。

さる7日から9日の3日間、西東京市青嵐中学校の2年生二人が、同市に本社を置く葬祭業「田中葬祭」で職場体験をしました。

人の最期を間近に感じる職場。そこで二人が学んだものとは――。

3日間の様子をレポートします。

祭壇を組み立てる中学生たち

 

祭壇設置、棺組み立て、看板作製―― 「手をかける温かさ」

職場体験は市内全中学の2年生が授業の一環で実施するもの。数人のグループに分かれ、地域の協力事業所で3日間を過ごします。

田中葬祭では2012年から青嵐中の生徒を受け入れており、今年は、サービス業を体験したいという渡邊葉生(よう)君と渡邊駿(しゅん)君の男子2人が志望しました。

二人が行ったのは、主に裏方作業。初日はロウソク立ての清掃、棺の組み立て、看板の布張り、2日目は祭壇の設置手伝い、最終日は御安置用のシーツづくりなどを行いました。

このうち、例えば棺の組み立てなどは、2人一組で釘や工業用ホッチキスを用い、板を箱状に仕立てるもの。「棺を傷つけないように慎重にね」と同社営業部長の鈴木朋之さんが丁寧に指導するなか、二人は初めての作業に没頭しました。

実は、このような棺組み立ては、すべての葬儀社が行っているわけではありません。既製の棺を使うケースが多く、むしろ人手も作業場所も要する組立型は敬遠される傾向があるといいます。

にもかかわらず、昔ながらの組み立てを続ける理由を、鈴木部長はこう話します。

「自分たちが組み立てた棺だと、運搬するときでも、扱い方や気持ちが変わってきます。大切にしたいという気持ちが強くなるのです。葬儀は1度きりの、やり直しのきかない大切な儀式。効率重視ではなく、『送る想い』を大切にしていきたいのです」

生徒二人が作業した「看板」もその気持ちが表れたものの一つ。駅などから式場へ案内する「○○家斎場」といった看板ですが、昨今はその文字をパソコンで打ち出す業者が大半となっています。しかし、田中葬祭では昔ながらの手書きにこだわっています。

「より多くの温もりが伝われば」と鈴木部長。

そうした「想い」を二人に伝えながら、鈴木部長は、作業の一つ一つの意味も説明。さらに、死に装束の一式も見せ、「宗派によって使う物が変わります」などの解説もしていました。

棺を作る中学生たち

 

中学生たちの反応は…

実際の葬儀にこそ臨まないまでも、施行の雰囲気を身近に感じた二人。さまざまな実作業の中で、特に印象的だったものに、同社の家族葬専用式場での「祭壇の設置」を挙げます。

「翌日ここで実際に葬儀が行われると言われて、作業しました。そう聞くと気が引き締まりました。式のために厳しく働く多くのスタッフの方の姿を見て、葬送の重みを肌で感じました」  

と葉生君。また、駿君も、

「幼稚園の頃に一度葬儀に出たことがあるだけで、葬儀というものを他人事のように思ってきました。実際に使用するものを作り、葬儀場に行かせてもらって、人が亡くなることの尊さを実感しました」

と口にします。

左から、指導した田中葬祭の鈴木朋之部長、職場体験した渡邊駿(しゅん)君、渡邊葉生(よう)君

 

これらの感想に対し、指導にあたった鈴木部長は、

「人の最期は本当に悲しくつらいもの。私は今でも、受け持ったお客様の施行で、感情が高ぶって言葉に詰まる瞬間があるほどです。それを感じてほしくて、あえて実感の伴う手作業を体験してもらいました。将来何の仕事に就くのであれ、ここで体験したことが胸にあれば、お年寄りをいたわり、人に誠実な青年になってくれることと思います」

と話していました。

なお、二人は東久留米市の浄牧院で住職の説法を聞き、5分間の座禅も体験。めったにできないことに触れた3日間となりました。

田中葬祭

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