最近はライターに原稿を依頼することが多いのだが、今号の1面「この町この人」は久方ぶりに自分で書いた。
(◎この町この人「歌手・Satokoさん」)
取材は、先月28日に東久留米市で開かれたコンサートの際に行ったのだが、Satokoさんは病気をされたとはとても想像できないパワフルな方で、2時間のコンサートを一人で受け持ち、飽きさせない。
「台本は用意せず、トークも選曲もその場のひらめきでやってます!」という姿勢にプロの力量のすごさを見た。
――が、実はこの欄でお伝えしたいのは、その裏で働いた方のことだ。
お名前は控え、Kさんとしておこう。Kさんは後期高齢者。しかしお姿は若々しく、幾つかのボランティア活動に参加している。このコンサートを主催したのも、実質はKさん。「おしゃべり会」という緩やかに人々が集まる会を開いており、その会の一イベントとして50人ほどが集まるコンサートを実現した。
「いやぁ、ああいうところで挨拶するのは苦手だなぁ」
休憩時間にぼそっとこぼすKさん。そのお姿は、可愛らしくもあり、格好よくもある。閉幕後は、会場の椅子を次々に運び、ピアノを移動し、来場者への挨拶を忘れず、最後はご子息(=たぶん)が運転する車にSatokoさんをお連れし、風のように消えていった。「名乗るほどの者じゃあ、ありません」といった感じで。
「高齢者の外出の機会が増えればと思ってね」と企画意図を話すKさん。地域の豊かさというのは、こういう方々に支えられている。言ってみれば、わが町のスーパーボランティアだ。
地域密着のメディアとして、そんな目立たない、いや、目立つことを望まない方々に、そっと光を当てられたなら。改めて取材の面白さを感じつつ、そんなことを思った次第。
(2019年11月6日号・本紙掲載分から転載)
株式会社タウン通信代表取締役。地域紙「タウン通信」を多摩北部で約10万部発行、ウェブサイトでも地域情報を発信する。著書に
『議会は踊る、されど進む〜民主主義の崩壊と再生』(ころから)、
『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、
『起業家という生き方』(同、共著)、
『スポーツで働く』(同、共著)、
『市役所で働く人たち』(同)がある。
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