平成の終わりに

2019年4月17日

タウン抄

「タウン通信」代表・谷 隆一コラム  タウン抄 

 

猫も杓子も「平成最後の~」という風潮の中で自分だけは流されまいと思ってきたが、この欄を書き出す絶妙のタイミングでビックリニュースが飛び込んできた。例の紙幣デザイン刷新の話題だ。

いやー、ここまでやるかー、というのが第一印象。むろん、現政権に対してだ。新時代をアピールするにはグッドタイミングとも思えるし、統一地方選挙の狭間で打ち出すのは姑息にも見える。自分自身の中に評価と批判が入り混じるが、どちらにせよ、この発表こそいかにも「平成らしい」という思いを強く持った。

平成とはどんな時代だったのか。読者それぞれにご意見がおありと思うが、恐らく誰もが認めるのがIT化だろう。世界的な潮流の話を元号の枠で捉えるべきではないかもしれないが、明らかにこの30年の中で、人々の情報への向き合い方、コミュニケーションの取り方、ライフスタイルは変わった。

では変わってどうなったかといえば、一つ言えるのは、パフォーマンス化だ。小泉政権に代表される劇場型政治があり、“誰でもメディア”の時代で、目立ってなんぼのユーチューバーたちが生まれている。

そうした風潮の中で大量の情報を処理するために人々のレスポンスは急かされるようになり、結果として反応型の社会になった。ネットにおける「いいね」と炎上がその象徴といえるだろう。

先の新元号発表の夜、テレビニュースでは、発表直後に「令和」を刻印したぐい呑みを製造する企業や、ツアーを組むために数人で一斉に「令和」を検索し始める旅行会社の姿が放映されていた。そこに、言葉を味わう姿勢はない。あるのは反応とパフォーマンスだ。

平成のパフォーマンスで忘れてならないのは、オリンピック招致の場で安倍晋三首相の語った「フクシマはアンダーコントロール」だろう。ITによって高度な情報社会になるといわれてきたが、私たちは真に価値ある情報社会を手にしたのだろうか。

少し前から、「ネットの幻想から冷め、実際の目の前のことを重んじる社会になる」と語られ出している。あるいは令和は、より地域社会が重視される時代になるのかもしれない。素晴らしい時代の幕開けを祈って。

(2019年4月17日号・本紙掲載分から転載)

 

谷 隆一

株式会社タウン通信代表取締役。地域紙「タウン通信」を多摩北部で約10万部発行、ウェブサイトでも地域情報を発信する。著書に『議会は踊る、されど進む〜民主主義の崩壊と再生』(ころから)、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『起業家という生き方』(同、共著)、『スポーツで働く』(同、共著)、『市役所で働く人たち』(同)がある。

2019/4/17

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