読者のご批判

2019年1月23日

タウン抄

「タウン通信」代表・谷 隆一コラム  タウン抄 

 

前号のコラムで、人がシステムの一部になっている社会を批判したつもりだったが、一転、私自身のモラルを問われる事態となった。

数は多くはないが、数人の読者から「汚れて流通させるべきでない紙幣を使うのは社会性に欠けている」とのご批判をいただいた。まったくの正論であり、返す言葉もない。我が身を恥じ入るばかりであった。

当然だが原稿を書くときは、一つの主張を持ってパソコンに向かう。誰かを傷つけていないか、別の見方はないか、支障のある表現になっていないか、などは常に気にするのだが、今回は自分の行動がベースだけに、その是非を疑いもせず筆が走った。

ご批判の中の一つには、「朝から不快だった」というメールがあった。一見したときは「何で?」と思ったが、なるほど、モラルの観点で読むと、確かに不快極まりない。書いた本人がそう読み返すのだから、恐らくそう感じた読者は多かったのだろう。お詫びしたい。

だまし絵が象徴的だが、同じ絵でもまったく違う見え方がすることがある。前号の原稿は、まさに私にとってだまし絵のようであった。社会批判の目で読めばそれなりにうまくまとまっていると思うが、モラルの観点を持って読むと、不快さしか残らない。正確さを追求する記事と違って、コラムの場合はおもしろおかしく誇張することがあるのだが、前号は、誇張した部分が見事に不快さとつながっていた。

こうした書き手と読み手のズレは、恐らくほかの記事でも、ぽつぽつ起こっているのだろう。ぜひ読者の皆さまには、折々ご意見を寄せていただきたい。読者のご意見から学ぶことは多く、今回のように、言われて初めてハッとすることもある。今はメールなどでも意見をしやすいし、当社でもフェイスブックなどで交流の場を設けている。前にも書いたが、まちづくりや民主主義というのは(ちょっと大げさだが)、人と人とが話すことがベースになるのだと思う。

といっても、私もそうそう精神が鍛え上げられているわけではない。ご批判の言葉は、できれば穏やかにお願いします。お褒めの言葉は、2割増で。

(2019年1月23日号・本紙掲載分から転載)

 

谷 隆一

株式会社タウン通信代表取締役。地域紙「タウン通信」を多摩北部で約10万部発行、ウェブサイトでも地域情報を発信する。著書に『議会は踊る、されど進む〜民主主義の崩壊と再生』(ころから)、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『起業家という生き方』(同、共著)、『スポーツで働く』(同、共著)、『市役所で働く人たち』(同)がある

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