「アマビエ」の切り絵を田無神社に奉納 作家・小出蒐さん

西東京市在住の切り絵作家・小出蒐さんが、2月初旬に、切り絵作品「疫病退散の婀魔毘依(アマビエ)」を田無神社に奉納しました。

アマビエは疫病の流行を予言した妖怪といわれており、今回の奉納は、国土の安寧と新型コロナウイルス感染症の終息を願ってのものです。

作品では、見目麗しい女性(アマビエ)が龍にまたがり、剣を振りかざしている姿が描かれています。線の勢いやコントラストの強弱を感じられるのは、切り絵作品ならでは。切り取った空間に色和紙を貼るという彩色方法が用いられており、力強さと優美さとを感じさせる作品に仕上がっています。

現在、拝殿に展示されています(展示終了は未定)。

田無神社に奉納した「婀魔毘依(アマビエ)」の切り絵を手にする小出蒐さん

 

作家の小出さんは、ニューヨーク日本ギャラリーや東京芸術劇場などで個展を開いてきた切り絵作家で、その作品は、富士川・切り絵の森美術館(山梨県富士川クラフトパーク内)で常設展示もされています。
また、作品集に『琥珀艶の光と影』『平家物語絵巻』があります。

今回の作品に込めた思いなど、お話を伺いました(下記記事)。

なお、小出さんと、田無神社の賀陽智之宮司からビデオメッセージもいただいています。まずは動画からご覧ください。

動画(57秒)


 

天の使いのアマビエ姫と龍の神様が「コロナ」に立ち向かう

——アマビエの切り絵作品を奉納したきっかけは?

「今年に入り、再び『コロナ』が蔓延してきたことを受け、何とかしたいという気持ちが募り、アマビエを描いた作品を奉納したいと賀陽宮司に相談しました。

毎年、絵馬コンテストで審査員をさせていただくなど、田無神社は私にとって身近な神社です。今、『コロナ』終息の願いを掛けるなら、田無神社以外にないと思いました。

実はすでに作ったアマビエの作品もあったのですが、せっかくならよりきちんとしたものを新しく作りましょう、ということになって。

B2判のサイズの作品を一気に2週間で制作しました。通常は20日から1カ月くらいかかるのですが、とにかく1日も早く終息してほしかったので、そこは集中しましたね」

拝殿で展示されている切り絵「婀魔毘依(アマビエ)」

 

——アマビエが女性ですね。どんな意味がありますか?

「本来女性とは、とても強い存在だと思っています。強い女性はキリッとしていて、自信を持っていて、周りを助けながら生きている。そんな女性の姿をアマビエ姫に重ね、擬人化しました。

そして、その姫は龍にまたがり、剣を振りかざしています。ご存知の通り田無神社は五龍の神様がいらっしゃる神社。龍の神様と天の使いのアマビエ姫が、『コロナ』に立ち向かい闘う姿を描いています」

田無神社境内にある「白龍」。田無神社では五龍神を祀っている

 

「龍になりきって鱗を切った」

——作品に込めた思いを聞かせてください。

「剣を持っていない左手は水平に伸ばしています。これは、長崎の平和公園にある『平和祈念像』を意識しました。

『コロナ』が終息したその先にあるもの、それは、世界平和です。

1日も早い『コロナ』の終息はもちろんですが、単にそれだけではない。世界平和に向かうことこそが、私の心からの願いです」

 

——タイトル「婀魔毘依」の由来は?

「片仮名で『アマビエ』と表記されることが多いですが、天からの使者という意味では少し軽いかなと。

美しい女性を意味する『婀』、魔性の力の『魔』、毘沙門天の『毘』に『依』という文字を当てることにより、重みのある表現を考えました。この文字も切り絵で作っています」

 

——こだわりの表れですね。ほかに、こだわったところはありますか?

「龍の鱗ですね。ほとんど下絵なしのフリーハンドで、自分が龍になりきって作り上げました。ぜひゆっくり見ていただきたいです。

あと、『婀魔毘依』はマスクをしています(笑)」

 

——読者にメッセージをお願いします。

「作品は龍とアマビエのコラボです。

『コロナ』の終息を心から願いながら作りました。

一人でも多くの人たちに見ていただき、一日も早く『コロナ』が終息して平和な日常が戻ることを願っています」

 

賀陽宮司「アマビエは見られてこそ効力がある」

一方、田無神社の賀陽宮司は、作品について、以下のように語ってくれました。

「普通の人には考えられないような構図。アマビエの美しさ、そして勇ましさ。
小出先生にしか描けない世界に感動しました。

アマビエの絵は、人々が目にすることで効力を発揮するといわれています。田無神社を通して、多くの人たちにこの切り絵を見ていただけることに感謝します」

なお、初詣や例大祭をはじめ、例年多くの参拝者を集める田無神社ですが、やはりこの1年は、「コロナ」の影響を大きく受けました。
初詣などにおいては、神社側から分散参拝を呼びかけ、「コロナ」感染拡大防止に努めました。

「今年の初詣はたくさんの人たちの協力のおかげで、例年の6割ほどの人出に抑えられ、密を避けることができました。

これも、地域の皆さんの『コロナ』を終息させたいという強い気持ちの表れです。

龍にまたがった婀魔毘依姫と西東京市に暮らす人たちの力を集結することが、必ず疫病退散に繋がると確信しています」

と、賀陽宮司は力強く語っています。

 * * *

【小出蒐さんプロフィール】
妖艶さを帯びた凛とした女性像の切り絵を得意とする。著書〜作品集 琥珀艶の光と影、平家物語絵巻の制作中 等 朝日新聞のカレンダー(西東京市内の名所旧跡など)日本で初の切り絵によるアニメ制作〜放映(日本の昔ばなし)個展〜ニューヨーク日本ギャラリー、東京芸術劇場など多数。富士川・切り絵の森美術館(山梨県富士川クラフトパーク内)にて常設展示も。

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