[この町この人]着脱容易なおしゃれ服を作る 高野 淳さん

2022年8月17日

すべての人にオシャレを! 

シニア、妊婦、療養中の人――脱ぎ着のしやすい服を求める人たちに、おしゃれなそれを提供したいと、この春、起業した。デザイン、型取り、裁縫、販売まですべて自分一人で行う。来月には個展も開く。

     ◇

その服のコンセプトは、「おしゃれ」と「着脱のしやすさ」。ストレスフリーなお出かけ服、と銘打つ。

多くの作品で取り入れているのは横が大きく開くデザイン。複数のボタンを配置し、自由に開閉ができる。胸側・背中側の区別を付けないのも特徴的。気分や事情に応じて、好きなほうを前にして着られる。

「前後や裏表の両面を使えるようにすれば、それぞれの身体のご事情に合わせて脱ぎ着していただけます。おしゃれという点でも、1枚で変化が付けられますしね」

具体的にはこんな場面をイメージしている。例えば右腕にマヒのある人の場合。先に右手を袖に通して左側のボタンを留めれば、着脱は容易だ。左手にマヒがあるなら、その逆にして着脱ができる。

こんなユニークな発想の元になったのは、自身の入院経験。面談が制限されたコロナ禍の中での入院のため、病院の寝間着をレンタルするしかなかった。が、その色・デザインはまったく気に入らないもの。しかも、横たわったままでの着脱は困難だった。

「病人だからおしゃれは不要というのは間違っている。むしろ病気で落ち込んでいる人にこそ、おしゃれな服で気持ちを明るくしてほしい」

そんな思いが強くなり、機能性とおしゃれを追求した洋服を考案。横が大きく開くデザインは、寝たままでの着脱のしやすさや、検査や点滴のときに対応しやすいという観点から生まれた。

自身がデザインした服を着て。生地も天然素材など肌に良いものにこだわっている

 

これを広めたい、と起業し、発想を広げると、対象は、身体に後遺症のある人や高齢者、妊婦など、多彩にいるのが見えてきた。今は女性向けのみだが、いずれは男性向けの洋服も視野に入れている。

店舗は持たず、当面はイベント開催やネット活用などを試していく予定。その始動を、来月に控えている。

「女性は、何歳になっても、どんな境遇でもおしゃれを楽しみたいもの。あきらめていた方に、喜んでもらえたら」

まだ手探りの状態だが、ブランド名だけは明確に決めた。その名は″オリーブグリーン〟。さまざまな色が混ざらないとできない色。「いろいろな人の思いをつないでいきたいのです」

 

たかの・じゅん
1956年宮城県出身。女子美術大学芸術学部工芸科で染織を学び、その後、大手百貨店勤務。結婚・出産に伴い退職後、トールペイント教室を主宰、再び同百貨店勤務を経て、合同会社オリーブグリーン創業。2級色彩コーディネーター、パーソナルカラーアナリストなど服飾にも関係する資格を複数持つ。
同社への問い合わせは(☎042・456・8003、インスタグラム=olivegreen422)へ。

編集部おすすめ

1

屈指のアイデアマン 神山伸一さん 現役課長が隣接市の副市長に――。 小平市職員の神山伸一さん(58)が小金井市副市長に任命されることとなり、「他市からの引き抜きは異例」と話題になっている。 大抜擢の理 ...

2

1975年に誕生した携帯サンドイッチの元祖・フジパン㈱の「スナックサンド」から、3月だけの期間限定で、「東村山黒焼きそば」と「ところざわ醤油焼きそば」が販売されている。 フジパン武蔵工場(入間市)の開 ...

3

3月3日は桃の節句。女の子の健やかな成長を祝うお祭りです。起源は古代中国の「厄祓い」の行事でしたが、日本に伝えられて江戸時代以降、現在のような形になりました。 ・・・と、暦をながめていたら、「ひな祭」 ...

4

全国のハンセン病療養所入所者たちが詠んだ詩が70年の時を経て現代に蘇る――4日から、東村山市にある国立ハンセン病資料館で、企画展「ハンセン病文学の新生面『いのちの芽』の詩人たち」が開かれている。同館に ...

5

ウクライナ出身のリリア・モルスカさんと、大学を通して交流を持った武蔵野大学の岩井雅治さん、菊地里帆子さん、山岸咲亜さんの4人で製作したウクライナを紹介する冊子「ひまわり」50冊が、西東京市に寄贈された ...

6

西東京市保谷こもれびホールの愛称が「タクトホームこもれびGRAFAREホール」に決まった。市が募集したネーミングライツ・パートナーに同市に本社があるタクトホーム㈱が選ばれたもの。GRAFAREは同社が ...

7

行政書士による「SDGs研究会」が発起 昨年1月に小平市で始まった無人の不用品譲渡「Baton BOX(バトンボックス)」が、1周年を経てさらに広がりを見せている。 これは、協力店先などに置かれた小型 ...

8

西東京市向台町の圡方隆一さん・仁美さん夫妻が、このほど、自宅の一部を改築し、「8cho8ma gallery(はっちょうやまギャラリー)」をオープンする。初回の展示会は6日㈮から。「若手作家を応援した ...

9

ウクライナの郷土料理・ボルシチを毎週木曜日にランチで提供――戦時下にある同国から避難してきたトゥロベーツ・エリザベータ(通称・エリザ)さんが、西東京市役所近くの創業サポート施設「リップル西東京」で食堂 ...

10

地元の出荷工場「東京エッグ」 玉子の黄身が濃くて、食欲をそそられる――。 西東京市泉町にある玉子出荷工場「東京エッグ」が敷地内に24時間稼働する玉子の自動販売機=下写真=を設置し、近隣で話題になってい ...

11

12月9日から 最大2000円分のお買物券が当たる!?――東久留米市で、9日㈮から「ブラック・ジャック×東久留米市スクラッチ」が実施される。 市内約290店舗が参加するもので、当たれば買い物券として使 ...

12

大手コンビニエンスストア「ファミリーマート」が行うフードドライブをご存じだろうか? 全国約1900店舗で実施され、この地域でも小平市や東久留米市で取り組まれている。小平市で連携するのはNPO法人「カモ ...

13

多摩六都科学館のプラネタリウムで、19日㈯から来年1月29日㈰まで、全編生解説の「全天88星座―光が語る天球の地図―」が投影される。 地域ゆかりのアーティスト・大小島真木さんが描いた星座絵とともに88 ...

14

小平市で最晩年を過ごし、同市名誉市民でもある巨匠彫刻家・平櫛田中の回顧談が、生誕150年の節目に合わせて発行された。1965年(94歳時)に語った、生い立ちから東京美術学校(現・東京藝術大学)で教えて ...

Copyright© タウン通信 , 2023 All Rights Reserved.