田無の初代市長の体験記 『原爆の記』が重厚なアニメに

西東京市と市民が協働 8日、アスタで初公開

軍医として広島の原爆被害を体験した初代の田無市長・指田吾一さんの記録がアニメーションで現代によみがえる――このほど、「非核・平和をすすめる西東京市民の会」と西東京市との協働で映画「忘れてはいけない記憶~西東京市にもあった戦争・アニメ原爆の記~」が完成した。8日㈯に、田無駅北口アスタで初公開される。

広島の原爆投下後に降った黒い雨の場面(アニメ『原爆の記』より)

 * * *

映画は、西東京市内の戦跡や空襲体験者の証言を紹介するドキュメンタリーと、独自に制作したアニメを、約40分の1本にまとめたもの。制作は「西東京シネマ倶楽部」が行った。ドキュメンタリーは2015年に制作された映像がベースで、アニメは新規に作られている。

アニメの原作は指田さんが記した『原爆の記』。派遣されていた広島での自身の被爆や、やけどの治療などに当たった体験をまとめた記録で、1969年の発刊後に埋もれつつあったものが、2007年に市民の手で復刊されている。
現在は、貴重な記録との評価から、国際基督教大学(ICU)社会科学研究所のホームページで無料公開もされている。

空襲の場面(アニメ『原爆の記』より)

それを原作にしたアニメは約15分。制作はアニメーションクリエイターの外村史郎さんが行った。墨を塗ったような重厚な絵で、迫力がある。また、俳優を目指したこともある外村さん自身が指田軍医の声優を務めており、太い声が作品に重みをもたらしている。

   ◇   ◇

映像制作を発案したのは、「非核・平和をすすめる西東京市民の会」会長の山本恵司さん。地域での映画上映や西東京市民映画祭を主催している「西東京シネマ倶楽部」の代表でもある山本さんは、復刊された『原爆の記』に出会ったときから、いつかはアニメに……と企画を温めていた。

外村さんとの出会いは、市民映画祭名物の自主制作コンペティションで外村さんが優秀賞を受賞したとき。2012年のことで、その時点でアニメ化を相談していたという。今回、脚本は演劇経験のある市民の中野浩太郎さんが書いたが、最初の打ち合わせ段階で外村さんは同書を読み込んでいた。

「映画祭」の活動で、佐藤純彌、大林宣彦、深作欣二、山田洋次、若松孝二といった巨匠監督と接してきた山本さんは「どの監督も口をそろえて、『平和のために映画を撮ってきた』と語っていた。私たちも同じ思いで、慰霊の気持ちを持って制作した。誇張でなく、アニメは国際短編映画祭入賞レベルだと思う」と胸を張る。

作品は8日㈯午後2時から、アスタ・センターコートで初公開される。外村さんのトークあり。予約不要。詳しくは同市協働コミュニティ課(☎042・420・2821)へ。

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