【この町この人】ホスピスを運営する看護師 冨澤文絵さん

2024年6月5日

祝福死をこの地域で

(PDFで読む場合はこちら

東久留米市前沢で、一軒家の空き家を活用したホスピス「はじまりの家そら」(5の5の11)を運営する。ランチカフェの営業やイベントも行う地域に開かれた異色のスタイルで、「これからのホスピスの一つのモデルを作れれば」と意気込む。根底にあるのは、「卒業式の門出のような死を迎えてほしい」の思いだ。

 

「元気なときから、一人ひとりの人生に関わりたい」

「人の役に立てれば」と看護師になり、勤務する病院で多くの死に立ち会った。次第に高まったのは、「自分の家で、自分らしく死を迎えたい」という人たちの希望に応えたいという思い。訪問看護の仕事を経て、自ら中野区で訪問看護ステーションを運営した。

が、ほどなく目線は、患者一人ひとりの人生へと向かった。

「多くの場合、私たちが関われるのは残りの数カ月の期間だけ。そうではなく、お元気なときから交流し、『何かのときにはあそこがある』と安心してもらえるようになりたいと思ったのです」

 

死の場面から目をそらすなんて、もったいない

そこで思いついたのが、地域の中に溶け込んだホスピスだった。普段はカフェを開いて健康的なランチを提供し、時折、映画鑑賞会や写真・絵画などの作品展も開催する。小さな発表会の会場にしてもらうのも大歓迎。地域の多世代が自由に行き交い、その中の一人に、今旅立とうとしている人の姿もある。

「そもそも死を日常から遠ざけてはいけないんです。不安感もあって、病院に依存しがちですが、自然死を見送ることほどいろいろな気付きが得られるものはありません。人の尊厳や自分の生き方の見直しなど――。その機会から目をそらすなんて、もったいないですよ」

死には終焉のイメージがあるが、「肉体を脱ぐだけ。亡くなっても魂は生き続けています」と力を込める。そんな思いから、「はじまりの家そら」とホーム名を付けた。

「私自身は、拍手で送ってほしいですね。『いい人生だったね』って。送る側も送られる側も晴れやかな気持ちになるような、そんな『祝福死』をこの地で広めたいです」

とみざわ・ふみえ 東京都出身。NPO法人コミュニティケア・ライフ理事長。2022年にコミュニティホスピス「はじまりの家そら」を開設、先月、規模を拡大した。

     ◇

同ホームでは、患者および家族(介護者)を短期で受け入れるレスパイト宿泊なども行っている。訪問看護も実施。詳しくは「はじまりの家そら」(☎042・420・5040)へ。

はじまりの家 そら

◎PDFで読む➡こちら

 

【取材余話】

インタビューの大半が「スピリチュアル」に費やされた。「死とは何か」という難題。聞き足りない気がしたが、それなら何度でも通えばいい。「はじまりの家そら」はランチなども提供する地域に開かれた場所で、無垢材や漆喰を用いた自然素材の造りで居心地が良い。提供する食材も、自然・健康にこだわっている。(谷)

2024/9/4

[この町この人]西東京市の「民泊」第1号 末光正忠さん・詩恵さん

民泊「matasan」を経営 2018年6月15日の民泊スタート時から、自宅の3室を開放している。当時、共同通信の取材に応じた影響もあり、全国の地方紙でその〝開業〟が取り上げられた。注目された理由の一つは、リタイア後の第二の人生での社会活動にもある。夫婦ともに70代後半となった今も、宿泊客の送迎や洗濯のサポートなどに駆け回っている。 民泊「matasan」の一室で   妻・詩恵さんの祖父が提供してくれた西東京市柳沢4丁目の広い土地。子ども3人と祖父らを交え、7人で住むつもりで大型の住宅を建設した ...

ReadMore

2024/8/12

【この町この人】ウクライナ避難民支援を続ける 別當紀人さん

受けた恩を地元で返す 着用しているTシャツは「Nadiya」オリジナルのデザイン(PDFで読む場合はコチラ)   西東京市や小平市でウクライナ避難民運営食堂「Nadiya」を経営する。ウクライナ避難民に仕事を提供し、彼らの収入源を確保するのが狙い。当初は定職に就きながら事業を興したが、「半端では続かない」と好きだった旅行業を離れ、避難民支援に完全に軸足を移した。内情を明かせば、食堂の経営は赤字状態。それでも彼らの仕事を作らなければと、「多言語カフェ」や「人物デッサン会」など、さまざまに取り組んで ...

ReadMore

2024/8/12

【この町この人】映画監督・にじメディア共同代表 齋藤一男さん

「映像」で求める共生社会 (PDFで読む場合はコチラ)   障害の有無に関係なく「『得意』と『好き』」で地域貢献しようというワークショップを、今月末から主催する。映像制作やアート作品の創作を通してさまざまな人たちが交流することを意図する企画で、「小さな集まりで、インクルーシブ(共生社会)を実現したい」と参加者を募っている。発案のベースにあるのは、自分自身が感じている生きづらさ。そして、「全ての人を置き去りにしたくない」という思いだ。      ◇ 大学で国際関係を学んでいた頃に、芸術志向の映画に ...

ReadMore

2024/10/5

【この町この人】ホスピスを運営する看護師 冨澤文絵さん

祝福死をこの地域で (PDFで読む場合はこちら) 東久留米市前沢で、一軒家の空き家を活用したホスピス「はじまりの家そら」(5の5の11)を運営する。ランチカフェの営業やイベントも行う地域に開かれた異色のスタイルで、「これからのホスピスの一つのモデルを作れれば」と意気込む。根底にあるのは、「卒業式の門出のような死を迎えてほしい」の思いだ。   「元気なときから、一人ひとりの人生に関わりたい」 「人の役に立てれば」と看護師になり、勤務する病院で多くの死に立ち会った。次第に高まったのは、「自分の家で、 ...

ReadMore

2024/8/12

【この町この人】今月で103歳になる 倭文満さん

ラバウル、最後の生き証人 (PDFで読む場合はコチラ)   今月16日で103歳になる大正10年生まれ。青春期は、赤道直下のパプアニューギニア・ニューブリテン島に築かれた軍事拠点「ラバウル」で約4年を過ごし、うち約1年は捕虜生活を送った。 現在は地域の中の交流サロンに通い、請われると当時の話をしたり、軍歌や戦前の歌を披露している。正式に調べてはいないが、自称、「ラバウルの最後の生き証人」だ。      ◇ 幼少期を過ごした茨城県の水戸で体力の基礎が築かれた。清流・那珂川の水泳教室に兄と共に毎日通 ...

ReadMore

編集部おすすめ

1

弱者に優しい社会へ、情報共有を 44歳で肺腺がんステージ4と診断され、2人の子どもを育てながら闘病を続ける水戸部ゆうこさん(50)の企画で、23日㈯㈷に小平市中央公民館で、がん関連の情報を広く伝えるオ ...

2

二十四節気の立冬(7日)と小雪(22日)を迎える11月は、いよいよ冬の始まり。 二十四節気とは、1年を24の期間に分け、それぞれ季節的な特徴を表す名称をつけたものです。 すこし前のデータになりますが、 ...

3

11月23日、市民の企画で 参加者募集中 西東京市と周辺市区を舞台に、時間内にできるだけ多くのチェックポイントを回って得点を集めるイベント「西東京シティロゲイン2024」が、11月23日(土)に開かれ ...

4

ワークショップのお披露目、トークセッションも 誰もが生きやすい社会を目指して、主に映像を用いた地域交流イベントやワークショップなどを行っている「にじメディア」が、11月28日(木)から30日(土)まで ...

5

 27階建て大型ビルの工事現場に、市民の思いを 公共施設が入る予定の工事現場の仮囲いに、小平の未来のイメージ画を飾ろう――。 西武国分寺線・拝島線「小川駅」西口前で建設中の再開発ビルを巡り、 ...

Copyright© タウン通信 , 2024 All Rights Reserved.