祝福死をこの地域で
東久留米市前沢で、一軒家の空き家を活用したホスピス「はじまりの家そら」(5の5の11)を運営する。ランチカフェの営業やイベントも行う地域に開かれた異色のスタイルで、「これからのホスピスの一つのモデルを作れれば」と意気込む。根底にあるのは、「卒業式の門出のような死を迎えてほしい」の思いだ。
「元気なときから、一人ひとりの人生に関わりたい」
「人の役に立てれば」と看護師になり、勤務する病院で多くの死に立ち会った。次第に高まったのは、「自分の家で、自分らしく死を迎えたい」という人たちの希望に応えたいという思い。訪問看護の仕事を経て、自ら中野区で訪問看護ステーションを運営した。
が、ほどなく目線は、患者一人ひとりの人生へと向かった。
「多くの場合、私たちが関われるのは残りの数カ月の期間だけ。そうではなく、お元気なときから交流し、『何かのときにはあそこがある』と安心してもらえるようになりたいと思ったのです」
死の場面から目をそらすなんて、もったいない
そこで思いついたのが、地域の中に溶け込んだホスピスだった。普段はカフェを開いて健康的なランチを提供し、時折、映画鑑賞会や写真・絵画などの作品展も開催する。小さな発表会の会場にしてもらうのも大歓迎。地域の多世代が自由に行き交い、その中の一人に、今旅立とうとしている人の姿もある。
「そもそも死を日常から遠ざけてはいけないんです。不安感もあって、病院に依存しがちですが、自然死を見送ることほどいろいろな気付きが得られるものはありません。人の尊厳や自分の生き方の見直しなど――。その機会から目をそらすなんて、もったいないですよ」
死には終焉のイメージがあるが、「肉体を脱ぐだけ。亡くなっても魂は生き続けています」と力を込める。そんな思いから、「はじまりの家そら」とホーム名を付けた。
「私自身は、拍手で送ってほしいですね。『いい人生だったね』って。送る側も送られる側も晴れやかな気持ちになるような、そんな『祝福死』をこの地で広めたいです」
◇とみざわ・ふみえ 東京都出身。NPO法人コミュニティケア・ライフ理事長。2022年にコミュニティホスピス「はじまりの家そら」を開設、先月、規模を拡大した。
◇
同ホームでは、患者および家族(介護者)を短期で受け入れるレスパイト宿泊なども行っている。訪問看護も実施。詳しくは「はじまりの家そら」(☎042・420・5040)へ。
◎はじまりの家 そら
◎PDFで読む➡こちら
【取材余話】
インタビューの大半が「スピリチュアル」に費やされた。「死とは何か」という難題。聞き足りない気がしたが、それなら何度でも通えばいい。「はじまりの家そら」はランチなども提供する地域に開かれた場所で、無垢材や漆喰を用いた自然素材の造りで居心地が良い。提供する食材も、自然・健康にこだわっている。(谷)
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