多磨全生園、自治会、東村山市が「災害協定」

2020年2月20日

避難所や防災備蓄品の保管などに

2月19日、国立のハンセン病療養所である「多磨全生園」で、入所者らによる「多磨全生園入所者自治会」と東村山市、同園の3者が「災害協定」を結びました。

災害に対して同園を活用していくことを謳うもので、大きな内容としては、

◎自宅倒壊等の被害を受けた人の避難先となる

◎帰宅困難者の一時滞在先となる

◎応急仮設住宅を設置できる

◎資機材保管場所等として園内の建物・土地を利用する

を明文化しています。

多磨全生園に隣接する国立ハンセン病資料館では、入口の梅が見ごろを迎えていた

同園の敷地面積は約36万㎡と広大で、広場も多く、また園内には病院や売店・食堂などもあります。このように避難所として十分な環境が整っているうえ、所沢方面と青梅街道を結ぶ所沢街道にも面しており、例えば帰宅困難者の受け入れなどでは重要な役割を担うことが予想されます。

さらに、東村山市の災害備蓄品の大規模倉庫は市南西部の富士見文化センターのみだったこともあり、同市の渡部尚市長は「東部に備蓄品の拠点ができたことは、市民に物資をお届けするうえで大きい。さっそく具体的な協議を始めさせていただきたい」と安心感を口にしました(※災害備蓄品の倉庫は、このほかに各学校などにも配置されています)。

 

「人権の森」を推し進める一歩にも

市民のための災害協定ですが、実はこの協定は、災害対策だけではない意味や目的を持っています。人権尊重の意識の醸成などです。

多磨全生園は、移る病気との認識からハンセン病の患者が隔離されてきた舞台です。治療法が確立した後も隔離政策は続けられ、患者たちの人権は無視されてきました。

そうした歴史への反省から、同園ではいま、この地の豊かな緑を後世まで残し人権の大切さを訴え続けていく「人権の森」構想が推し進められています。同園には252種・約3万本の樹木があり、これらは入所者たちが同地の緑化を願って1本1本植えてきたものです。この緑を通して人権が阻害された歴史があったことを後世まで伝えたいとの同自治会の提唱で同構想が2002年に始まり、市も賛同して、これまでに交流イベントや清掃ボランティア活動、啓発活動などを多彩に行ってきています。

災害協定は、同園と市民とを結びつけていくものの一つでもあり、渡部市長は「災害協定は『人権の森』構想をさらに進める一歩となる」と話します。

また、自治会副会長の藤田謹三さんは「私たちはこの場所を何とか後世に残していきたいと願って『人権の森』構想に取り組んできました。ここが災害時の皆さんの避難所になるということは、必然的にこの場所が残されていくということ。それを嬉しく思っています」と話していました。

協定締結式の様子を短い動画にまとめましたのでご覧ください。同園は東京オリンピックの聖火リレーのセレブレーション会場に選ばれていることもあり、渡部市長は「この場所から国内外に人権の大切さを発信していければ」といった趣旨も語っています。

 

なお、国立のハンセン病療養所は国内に13カ所ありますが、このように自治体と災害協定を結ぶのは多磨全生園が初とのことです。東村山市は、全国ハンセン病療養所所在市町連絡協議会の会長市ということもあり、渡部市長は「全国に先駆けて協定を結べた意義は大きい」と語ります。

「市町連絡協議会」では、東日本大震災以降の2012年から毎年、「災害時に入所者たちが孤立しないように」と国に要望をしてきたそうで、この協定締結が全国の療養所に広まることを期待しているようでした。療養所によってはもともと孤立した山間部などに設置されているところがあり、災害時の対応については不安の声があるとのことです。

◆多磨全生園

東村山市青葉町4-1-10

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