「農業と福祉」の連携で作る旬の「健康ピクルス」 東久留米から

2020年10月11日

東久留米市産の旬の野菜を用いた「健康ピクルス」の販売がスタートしました。

ユニークなのは、近隣の障がい者らが生産にかかわっている点。地場産野菜の魅力発信とともに、彼らの就労支援も目的にした「農と福祉」によるプロジェクトで、今後、「ふるさと納税」の返礼品に採用されることなどを含め、地域の名物にしていくことを目指しています。

東久留米市産の野菜で作った「健康ピクルス」

 

旬の食材を用い、一つ一つ手作り

この「健康ピクルス」は、東久留米市大門町にある「野島農園」で採れたキュウリ、ダイコン、トマト、タマネギ、トウモロコシ、唐辛子、ニンジン、ニンニクなどの四季折々の野菜を、専門業者が手作業で漬けたものです。

収穫量が限られているため、今のところ1種類あたり数瓶の生産に留まっていますが、その分、オリジナル性の高い漬け方もでき、例えば「白タマネギ・ピーマン・レモン」という新しい組み合わせなどを生み出しています。

生産は数種類を同時に行っており、初生産となった7月には57個。2回目となった8月には110個を作っており、今後、収穫量や販売数を見ながら、生産量を調整していく予定です。
なお、種類問わず1個896円です。

1個896円

 

「農業と福祉」の幸運な出会い

この企画を進めるのは、誰もが生きやすい社会の実現などを目指して活動する一般社団法人「おらがまち」です。
同団体では、社会で生きることに困難のある人の就労支援として「農業」の場を重視しており、趣旨に賛同してくれる農家を求めていました。

そんななかで出会ったのが、東久留米市で400年以上続く「野島農園」です。

有機農法で四季折々の作物を生産している同農園では、以前から、地域の人々に収穫体験をしてもらったり、高齢者施設に収穫物を寄付するなど、さまざまな形で農業と地域とをつないでいました。

2年前に近隣に精神障害者の就労支援などを行う一般社団法人「Polyphony(ポリフォニー)」(生活訓練事業所)ができてからは、「土に触れることで、精神が癒やされる」と農作業の場を提供しており、その後、西東京市ひばりが丘に拠点を置く就労以降支援事業所「ピュルエルワーク西東京」にも農園を開放しています。

そのような取り組みの動機について同農園の野島貞夫さんは「農業を通して東久留米の魅力を知ってほしいから」と話します。

「『水と緑の町』を標榜する東久留米は、都内でも有数の農地がある町です。ここには、きれいな水、空気、そして土があります。

この町の魅力を知ってもらうには、農業に触れていただくのがいちばん。そんな思いから、地域の人に向けて収穫体験の場を設けるなどしてきました。

福祉への思いもありますが、それ以上に、とにかく一人でも多くの人に土に触れてみてほしいという気持ちが強いです」(野島さん)

できたばかりの商品にラベルを貼る関係者たち=野島農園の作業場で

 

製品になる喜び

「おらがまち」が構想していた「農業と福祉の連携」を、すでに実践していた「野島農園」。
この二者が出会うことにより、企画はより発展的に進んでいきました。

当初、「おらがまち」が生産を予定していた商品は別のものでしたが、有機農法で採れる野菜の立派さにピクルスへと方針を転換。少量生産にも対応している事業者を探し、「健康ピクルス」が生まれました。

「おらがまち」代表の豊嶋文子さんは、作業にかかわる精神障害者たちへの効果も口にします。

「野島農園での作業で印象的だったのは、農作業を指導してくださる年配の方が『あの若者たちは力があって助かるなぁ』とつぶやかれていたこと。

彼らにも活躍の場があることを実感しました。

それに加えて、このピクルス作りの場合は、ラベル張りや梱包などの手作業も多く、就労支援という意味でも、いろいろな経験をしてもらえると思います。

何より、そのようにして商品になり、それが多少でも実益を生むというのは、彼らの生きがいにもつながるのではと思います」

 

地域の特産品を目指して

なお、新たに生まれたこの「健康ピクルス」は、市の特産品認定の取得など、地域の名物となることを目指すとのことです。
「ふるさと納税」の返礼品に使ってもらうことも視野に入れています。

「旬の食材をいちばんおいしいときに収穫して、製品化しています。ピクルスは長期保存できるので、季節を問わずに『旬の味』を楽しんでいただけるのが利点。有機農法による野菜は体にも良いので、ぜひ多くの方に手に味わっていただきたいです」

と豊嶋さん。

なお、販売先は地域の中で拡大中。詳しくは「おらがまち」(03-5565-3982)へ。

おらがまちのウェブサイトでは、通販も行っています。

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