全国のハンセン病療養所入所者たちが詠んだ詩が70年の時を経て現代に蘇る――4日から、東村山市にある国立ハンセン病資料館で、企画展「ハンセン病文学の新生面『いのちの芽』の詩人たち」が開かれている。同館による大規模な文学展は初。
展示されているのは、1953年に詩人・大江満雄が編者となって発行した詩集『いのちの芽』からの作品など。22人による25作品が、「病いの中の生」「故郷・家族」など8つのテーマに分けて掲げられている。
そのほか、詩集に参加したメンバーがその後の人権回復運動に大きく関わったことや、編者となった大江の半生などが写真や著作物などで紹介されている。
企画展の元となった『いのちの芽』は、全国の療養所の入所者たちが参加して一般向けに刊行された唯一の詩集。らい予防法闘争の最中に編集・発行されており、それまでの入所者たちによる文学のイメージとは一線を画した、希望、連帯、再生を感じさせる力強さが特徴。詩集には73人による227作品が収録されている。
同展を中心になって企画した同館学芸員の木村哲也さんによると、日本国憲法に基本的人権の尊重が謳われたことや治療薬の登場により、戦後、入所者たちの意識は急速に変わっていったという。
「自らの境遇を『宿命』とするのではなく、変革可能な未来と捉える者が出てきた」
と木村さん。企画展については「戦後の療養所で生まれた詩の魅力に目をとめ、ハンセン病問題への理解を深めていただけたら」と話す。
また、注目すべき詩人の一人として、性的少数者の入所者だった船城稔美さんを挙げ、「理解が広まってきた今こそ、マイノリティを生き切ったその存在に光が当たってほしい」と指摘している。
会期は5月7日㈰まで。月曜休館。午前9時30分から午後4時30分まで。入場無料。期間中、講演会などが多数ある。
詳しくは同館(☎042・396・2909)へ。
※編集部注 イベントは終了していますが、地域情報として掲載を継続しています。