松原清二院長にインタビュー
外出困難で通院できない人を救いたい――在宅医療の必要性と課題が同時に叫ばれている昨今、西東京市で先月、在宅療養支援診療所「まつばらホームクリニック」が開業しました。
院長の松原清二医師は、ここ数年在宅医療を中心としている臨床医です。「特にこの地域は在宅医療のニーズが高い」と指摘します。
その現状や訪問でできること、開業の狙いなどを聞きました。

松原清二医師/内科認定医、循環器専門医、認知症専門医。 東京医科大学卒業後、複数の病院勤務を経て、2015年に「まつばらホームクリニック」を開院
在宅専門クリニックを開いたワケ
――クリニック開業の意図を教えてください。
「大学病院などで循環器を中心に診療してきたのですが、何度も入院してくる高齢者を見ていて、在宅医療の必要性を痛感しました。
それで清瀬市と中野区にある在宅医療専門の病院で経験を積んだのです。
その際、西東京市や東久留米市の方の依頼が多く、この地域の在宅医療ニーズが高いことが分かりました。
近隣のホスピスは常時50~100人待ちという状況もあり、ここに自分の役割があると感じたのです」
――訪問では、どのような方を診るのでしょうか。
「足腰が弱ったり、認知症がひどくなったりして、通院が困難になった方が主な対象になります。
具体的な状態としては、吸引・人工呼吸器・胃ろう・尿道カテーテルなどの管理が必要な方や、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の方、持病のある方などになります。
定期的に訪問してお体を管理し、時には、再入院を防ぐために、薬や軽処置による早期の医療介入を行っていきます。
それでも状態が悪化したときには、患者さんやご家族の人生観、死生観、病状に応じて、入院するか、ご自宅での加療にするのかなどの治療方針を決めていきます。
がんの方の場合などは、最終的に看取りになることも多く、その場合は終末期の緩和ケアが中心になります。
個人的な体験では、末期がんの90代女性を看取った際、ご家族から『看取りってこんなにいいものなんですね』と言われたことがあります。
さまざまな選択肢から、ご本人、ご家族が納得できる治療を選ぶことが大事です。

現在では、小型の心電図などがあり、「訪問」で外来並みの診療ができるという
訪問医療でできること
――どういう診療がで きるのか気になります。
「黒い鞄一つに聴診器を入れて……というイメージを持たれがちですが、現状では医療機器や薬剤の進歩もあり、かなりのことができるようになっています。
携帯できるエコー検査の機器で心臓や腹部、ぼうこうなどの観察もできますし、血液検査も外来同様に行えます。また、不整脈や狭心症の状態の判定も心電図検査でできますし、肺炎や喘息、心不全の悪化に対しては、点滴加療での対応や酸素療法などができます。
ただそうはいっても訪問診療でできる医療が限られているのも事実ですし、ご家族の介護能力もまちまちですから、病院での対応を検討せざるをえない場合もあります。
このことは地域の総合病院の先生方や地域医療連携室の方々ともお話しし、ご理解を示していただきました。ご協力してくださるとのことです」
――ただ、「在宅」ができるのは、恵まれた人だけでは?
「そこに誤解があるようです。在宅介護は、その方の状況に合わせてケアマネジャーがプランを設計します。状況によりますが、認知症の独居の方でも「在宅」は可能です。医療はその中の一部です。誰でもできるものだと知ってほしいですね」
在宅医療のシステムとは
――在宅医療と言ってもクリニックのシステムが分かりません。
「在宅医療とは、基本は月2回以上、計画的に、私たち医師が患者さん宅に伺い、病態の観察や治療を行うことです。
足腰やお体が弱っている方々が主な対象となりますので、ちょっとした状態の悪化が入院につながることが多く、24時間対応となります。
と言っても、分からないことがたくさんおありのことでしょう。遠慮なくお気軽にお電話ください。この地域でお役に立てればうれしいです」
まつばらホームクリニック
◎042-439-1250
◎西東京市東町4-14-18