不思議な話

猫 耳 南 風

太宰治文学賞作家 志賀泉さんコラム

 

この原稿が掲載される頃は初秋だと思うけれど、これを書いている今は夏。ということで、今回は僕が経験したちょっと不思議な話をしてみよう。

* * *

一、幼馴染みの女の子が中学三年の時に不治の病で亡くなった。翌晩、受験勉強をしていたら部屋の明かりが不意に消えた。天井の照明と卓上スタンドが同時に。停電ではない。僕の部屋だけだ。翌日、この話を同級生にしてみたら、その人もほぼ同時刻に同じことが起きたという。

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二、大学時代、「飾っておくと悪い夢を見るから」と友人に貰ったムンクとクリムトの絵をアパートの壁に貼ってみたら、ほぼ連日連夜の金縛り。あまりに続くのでほったらかしにしていた故郷の神社のお守りを柱に画鋲で留めてみたら見事に解消した。

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三、狭山市の本屋で働いていた頃、アルバイト数人と居酒屋で飲み会を開き、なぜか怪談話で盛り上がっていたら、僕のグラスが手も触れていないのにいきなり割れた。破片が不自然に飛び散っていた。

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四、鷹の台の本屋で働いていた頃、あまりに暇なのでレジカウンターで『新耳袋 現代百物語』という本を立ち読みしていたらレジが勝手に動き出し、白紙のレシートがカタカタと出てきた。しかも途中で折れ曲がりもせず、真っ直ぐに立ったまま。慌ててあらゆるボタンを押したが止まらず、電源を切ったらようやく止まった。本気で怖かった。

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五、自著『つなみ』の出版が決まった直後、スーパーで買った六個パックの卵すべてが双子だった。嬉しかった。

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六、震災の年の秋、福島県いわき市の海岸にある「賽の河原」と呼ばれる自然洞穴に入ってみた。その夜から誰もいない僕の部屋で水音が聞こえだした。(ピチョピチョン)。数日後、携帯電話のメールの着信音が水音に切り替わっていたと判明。「なあんだ」というオチなのだが、いつどうして設定が切り替わったのか、よくわからない。

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以上。他にもいろいろある。偶然といえば偶然だけど、不思議といえば不思議。みなさんはどんな経験をお持ちですか?

 

プロフィール

志賀 泉

小説家。代表作に『指の音楽』(筑摩書房)=太宰治文学賞受賞=、『無情の神が舞い降りる』(同)、『TSUNAMI』(同)がある。福島県南相馬市出身。福島第一原発事故後は故郷に思いを寄せて精力的に創作活動を続けている。ドキュメンタリー映画「原発被災地になった故郷への旅」(杉田このみ監督)では主演および共同制作。以前、小平市に暮らした縁から地域紙「タウン通信」でコラムを連載している。

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