コロナ禍で限界… 56年続いた「三又酒店」が物語るものとは

2021年6月16日

コロナ禍で限界が来た……。
西東京市で56年続く「三又酒店」が今月末で廃業することとなり、地域に衝撃を与えています。

店主の山崎明さんは、市が構築を急ぐ「西部地域協力ネットワーク」の代表を務めるなど、さまざまな地域活動に関わってきた人物です。こうした店が存続できないとなると、今後の地域コミュニティはどうなるのでしょうか。

この廃業が物語ることは少なくありません。

 

地域活動に熱心な個店が廃業へ

「 ハイ、まいど! いつものやつね。後で届けに行くよー!」

10畳ほどの店内に、山崎さんの元気な声が響く。店は、ひばりヶ丘駅から歩いて10分ほどの、谷戸新道沿い。季節の日本酒や、各地のみその量り売りが人気の店です。

加えて、同店では配達を行っており、地域の会合やお祭り会場、葬儀や法事の場にビールサーバーやジュース類などを届けてきました。配達は個人宅にも行っています。

「モデルは『サザエさん』の三河屋さん。幼少の頃から親父が一軒一軒配達するのを見ていて、その姿に憧れていました」

と二代目になる山崎さんは理想の酒屋像を語ります。

 * * *

しかし、営業努力が実っていた事業は「コロナ」で一変しました。

配達は激減。
タイミング悪く、コロナ禍直前に大型冷蔵庫のリース契約も結んでいました。

酒販量の報告義務がある4月、改めて販売量を見て愕然としたといいます。

売り上げは前年の4割減。主力商品のビールに至っては半分以下。一方で、ほとんど出番のない大型冷蔵庫のために毎月多額のリース料が出ていく……。

もう、もたない。

決断の瞬間でした。

先代が創業し、56年続いた「三又酒店」の前に立つ山崎明さん

 

追い込まれる地域の個店 サービス画一化への懸念

同店の廃業が物語ることは少なくありません。

まずは、そもそもの個店の状況についてです。

西東京市小売酒販組合に加盟する酒販店は現在23店。20年前の140店超から、7分の1にまで減っています。

背景にあるのは、ドラッグストアなど酒類を扱う中・大型小売店の増加や、ネット通販の隆盛です。

同店では、チェーン展開する小売業などにはできないきめ細かなサービスを磨いてきましたが、コロナ禍前からの逆風がボディーブローとなりました。

「例えばビールサーバーのレンタルは、使用前後に洗浄などの手間がかかるので、請け負う酒屋がだいぶ減りました」

と山崎さんは指摘します。

結局、こうした個店が消えると消費者が画一的なサービスしか選択できなくなる恐れがあります。

これは酒販業だけの話ではないでしょう。

 

地域コミュニティの弱まる恐れも…

もう一つ、同店を語る上で欠かせないのが、山崎さんの地域への関わりです。

山崎さんはこれまで、谷戸商店街協同組合理事長、ほっとネット地区推進会議委員、消防団員、公民館講座での講師などを務め、近隣の小学校への授業協力なども積極的に行ってきました。

地域活動への思いを、山崎さんは「この町に生まれ、育ててもらったことへの恩返し」と話します。

「幼い頃、両親が仕事で夏祭りに行けなかったとき、町の人が『連れて行ってやるよ!』と手を引いてくれました。今度は自分が手を引く番だという気持ちがあります」

しかし、今後は会社勤めが決まっており、活動は限定的になりそうです。

店内で

 

行政の支援策の是非は?

コロナ禍になり、酒の提供が控えられる状況となりました。

従う飲食店には協力金が出ますが、酒販業者への支援金はありません。行政の地域事業者への支援策は適切なのでしょうか。

「市職員や商工会の方とも会いますが、皆さん一生懸命尽くしてくださっています。不公平感を言い出したら言い分は誰にでもあり、切りがないですよ」

そう話す山崎さんは、倉庫に用いていた所有地を売却して、リース料を清算する予定だといいます。

なお、営業は残り約2週間ですが、セール等を行う考えはないとのことです。

「生産者がプライドを持って作ったものを、店の都合で投げ売りすることなどできません。今は亡き親父が作ったこの店を、親父と同じスタイルで最後まで貫きます」

※三又酒店/西東京市谷戸町2-10-5 月曜定休

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