パラ・有安諒平選手が母校・自由学園で講演  東京終え、北京も目指す

2021年10月5日

東久留米市にある自由学園出身で、パラリンピック東京大会のボート競技に出場した有安諒平選手(東急イーライフデザイン、杏林大学医学部)が、先月25日、同学園の高校生・最高学部生(大学生)に向け、多様性をテーマに講演した。

有安選手は、来年の北京冬季パラリンピックにパラノルディックスキー競技で出場することを目指しており、合宿中の青森県からオンラインで話した。

パラリンピック・ボート(PR3)に出場した有安諒平選手(写真は練習の様子。©S.AKAGI)

 

有安選手には網膜黄斑ジストロフィーという目の難病による弱視の障がいがあるが、弱視が気になり出したのは学園に入った中学1年生頃からという。高校1年のときに障害認定されたが、その後も最高学部まで学園に通い(転学のため中退)、同級生と一緒に学び、活動した。

講演では、そうした学生時代を振り返りつつ、パラ東京大会の競技についてや選手村での交流などを写真を交えて語った。学生たちへのメッセージとしては、「多様性を包摂する社会においては、『そもそも互いの前提が違う』という認識を持つことが大事。共感の意味で『エンパシー』が重要だと言われるが、ぼくはその言葉を『相手の立場をどれだけ理解できるか』という意味で捉えている」などと話した。

有安選手はパラノルディックスキー日本チームの強化指定選手になっており、北京大会への出場権がかかる12月の世界大会に向けて練習を積んでいる。

なお、講演は動画で公開されている(https://youtu.be/q_zTCu8TwKc)。

自由学園在校時の有安選手。植物の観察実習で

 

有安選手への一問一答インタビュー

「タウン通信」では、講演終了後に、有安選手に個別でインタビューを行った。以下、一問一答。

——有安選手が出場したパラリンピック・ボートの「PR3クラス」は、視覚障がいがある男性1人・女性1人、肢体不自由のある男性1人・女性1人、障がいの有無を問わない舵手1人の5人編成と紹介がありました。

まさに多様性の競技ですが、その魅力や難しさを教えてください。

「ボートはバランスやリズムが重要です。同じ体格や筋力のメンバーが揃えば、動きを同調させることが比較的やりやすくなりますが、パラボートでは、男女混合で、障がいも違うので、同じ動きということが難しいですし、そもそも同じ動きをすれば良いというものでもない。

チームとして最もパフォーマンスが出るように、それぞれの特性が生かしながら、同時に歩み寄ることが大事になります」

障がい・性別の異なる5人でチームを組む  (©S.AKAGI)

 

——まさに、講演で話した「エンパシー」ですね。

「お互いを本当の意味でどれだけ理解しているか、というのが問われてきます。そのためには、日頃のコミュニケーションが重要です」

 

——東京大会の成績をどう受け止めていますか?

「12チーム中12位の成績だったのですが、もともと出場できるかどうかも実力的にはぎりぎりでした。もちろん悔しさはありますが、日本チームとして、初めてPR3(混合舵手つきフォア)でパラリンピックという大きな大会に出られたことは、スタートラインに立ったという意味では良かったかな、と思っています」

 

——その大会を終えて、すぐに冬季パラリンピックを目指しています。なぜパラノルディックスキーに?

「ボートとノルディックスキーは使う筋力やトレーニング内容などで親和性が高く、オリンピック選手でも、両競技に取り組む人が多いです。

ぼくも両競技を並行していて、北京を目指すのは以前から決めていたことでした。

東京大会の1年延期の影響で、北京まで時間がないのですが、ガイド選手を始め、協力してくれる方々がたくさんいるので、全力で挑戦しようと思っています」

パラノルディックスキーを練習する有安選手 

 

―—ところで、自由学園に通っていた頃についてお聞かせください。有安選手は、入学後に弱視が分かり、症状が進んだわけですが、中学・高校・最高学部と、同級生と同じように過ごしています。不自由などは感じなかったのですか。

「いま会うと、先生方から『当時は配慮が足りなかった』とよくおっしゃっていただくのですが、ぼく自身はそんなに困っていた記憶はありません。

細かなことで困る場面は確かにあったのですが、だから学校側に配慮がなかった、とは思いません。

当時を振り返ると、ぼくの側にも『障がいを受け入れたくない』という思いがあり、無理をしていたというか、普通を装うところがありました。

もし『困っている』と声を上げていたら、自由学園は絶対にすぐに対応してくれたと思います。

その経験から思うのは、共生社会においては、サポートしてもらう側もちゃんと声を上げることが必要ということです」

 

——今も学園とかかわりがあるのですか?

「この数年、最高学部で『スポーツと生きがい』をテーマに講演の機会をいただいています。年に1度だけですが、キャンパスに行くと、やっぱり懐かしいですね」

 

——最後に、読者にメッセージをいただけますか。

「今回の東京大会によって、パラスポーツへの関心がとても高まったのを肌で感じています。SNSなどにも、多くの方から反応をいただけるようになりました。

これからもぜひ関心を持ってもらって、パラスポーツを競技として楽しんでほしいなと思います。

それと、東久留米市や西東京市の人たちに対しては、何かのときにはぜひ交流させてほしいな、という思いを持っています。

やはりひばりが丘周辺は、ぼく自身、青春時代に通った愛着のある地域ですから」

 

◆有安諒平さん
1987年2月生まれ、アメリカ・サンフランシスコで生まれ、幼少時に帰国。中学から自由学園に通い、最高学部在籍時に筑波技術大学に転学、理学療法士の資格を取得。研究職、病院勤務などを経て、現在、株式会社東急イーライフデザインに所属。理学療法士の資格を生かした仕事をしながら、パラボート、パラノルディックスキーの競技選手として活動する。同時に、杏林大学医学部統合生理学教室にも大学院生として籍を置く。

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