古民家でコーヒーと撮影会 武蔵野市の茶室「松露庵」で月1開催

自分を見直すひと時

茶室のある古民家でポートレートを撮影してもらい、コーヒーを片手に静かに時を過ごす――武蔵野市立古瀬公園内にある茶室「松露庵(しょうろあん)」で、そんな撮影会「おもかげ松露庵」が月に1度開かれている。昨年4月に始まり1年を迎えようとするなか、中高年女性を中心に、「自分を見つめ直すきっかけになった」と口コミで広がり出している。

古民家の廊下でのポートレート撮影の様子

 

「緑色が好きなので、この服で来ました」
と一人で撮影に訪れたのは、西東京市の雅美さん(51)。手入れされた日本庭園で撮影してもらい、「こういう撮影で緊張しなかったのは初めて」と笑顔を見せた。

同じ時間帯で、やはり一人で訪ねてきた小平市の浅井安美さん(69)は、古民家の廊下でも撮影。リラックスした表情の自身の写真を見て、「亡くなった母に似ている。この年になると、母に似てくるのがうれしいんですよ」と満足げに話した。

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庭園でのポートレート撮影の様子

 

この撮影会を主催しているのは、西東京市でカフェ「田無なおきち」(田無町4の28の7の2F)などを経営する㈱にわと蔵。同市にある多摩六都科学館や武蔵野市の吉祥寺シアターで館内カフェを運営してきた実績が買われ、(公財)武蔵野文化生涯学習事業団から「松露庵」の活性化事業を相談された。

そこで当初はマルシェの開催などを計画したが、矢先にコロナ禍となり、人を集める企画は見送りに。代案を模索するなか、茶室である原点を重視して、「コーヒーを手に自分と向き合う場」と企画を練り直した。

「コロナ禍で一人の時間が増え、自分を見つめ直した方は多いはず。そのアウトプットの場があればと考えました。そのとき、ポートレート写真は、自分を客観的に見つめる良いツールになると思ったのです」

と同社代表の佐藤うららさん。交流のある女性のプロ写真家・BUNさんの協力を得て、月に1度の開催を定着させた。

実際にスタートさせると、来場者の動機はさまざまだった。遺影写真のつもりの人、友達と連れ立って来て会話を楽しむ人、場所に引かれて覗きに来たという人――。

ちなみに冒頭の2人は、「一つの区切りといえる50歳になったら自分の写真を撮りたいとずっと思っていた。写真館には行きにくくて1年ずれたけど、ここは気軽に来られました」と雅美さん。浅井さんは「遺影はまだ早いと思うけど、考えてみると自分一人の写真は持っていない。70歳になる今年は一つの転機な気がして、撮っておきたい気持ちになりました」と話していた。

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古民家をリニューアルして茶室にした「松露庵」。一般利用が可能だが、築80年以上がたち、老朽化が問題となっている

 

会場の松露庵は、かつて宮内庁御用達のタンス商だった古瀬安次郎の別荘を1974年に武蔵野市が買い取り、2003年のリニューアルで茶室にしたもの。施設の貸し出しや事業団の自主事業で使用されているが、築80年以上で老朽化が目立ち、市は今後の耐用年数は10年以内と示している。伝統工法による補修の難しさや建築資材の調達の困難さがあり、今後の対応を検討中だ。

そのような状況のなかで佐藤さんは「まずは、この場所がどんな所かを多くの人に体感してほしい」と訴える。

「ここで撮影されたポートレートを見れば一目瞭然です。皆さん、とてもすてきな表情をされている。古民家が持つ、時間と場所の力があるのです」

年を重ねてきた自分を見つめ、残された時間への一歩を踏み出す――。確かにそんなひと時を過ごすには、ここほど適した場所はないのかもしれない。

なお、次回の撮影会は27日㈪。午前10時~、正午~、午後2時30分~の3回。各回4人までの定員予約制。焙煎コーヒー1杯、撮影・2L判プリント写真1枚付きで5000円。

詳しくはカフェ吉祥なおきち(☎070・1399・7028、kissnaokichi@gmail.com)へ。

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