「胃がん、大腸がんから身を守るために 今、知っておくべきこと」 公立昭和病院 上西紀夫院長に聞く

日本人の死因第1位のがん。中でも男女合計で罹患者が最も多い大腸がんと、胃がんについては、特に適切な検査や治療などを知り、正しく理解しておきたいものです。

そこで北多摩北部医療圏で唯一、国のがん診療地域連携病院に指定されている公立昭和病院院長・上西紀夫先生に、消化器がん専門医の立場からお話を伺いました。

公立昭和病院の上西紀夫院長

胃がんの原因「ピロリ菌」の感染率が高い日本人

――罹患・死亡者が多いのはどんながんですか。

「日本人が生涯でがんになる確率は今や2人に1人といわれています。年齢別の罹患率を示したデータ(=左グラフ)から、特に60歳以降に急上昇することが分かります。

部位別では、男女合わせての罹患数が最も多いのが大腸がんで、次いで胃がんとなっており、高齢になるほど誰でもこの2つのがんになる恐れがあるといえるでしょう」

 

――胃がんが多いのはなぜですか?  

「日本人は胃がんを引き起こす細菌『ヘリコバクター・ピロリ』(ピロリ菌)の感染率が高いことが主な要因と考えられ、60代以上の人の約6割~7割が保菌者といわれています。

乳幼児の頃に感染し、胃の中でゆっくりと長い時間をかけて増殖し、胃炎や胃潰瘍、がんを引き起こすことが分かっています。

また、がんのリスクが高まる萎縮性胃炎の原因となる塩分摂取量が多いことも要因の1つといえます」

 

食の欧米化が大腸がん増加の一因

――大腸がんが増えている理由は?

「大腸がんはもともと欧米人に多く、日本人はここ20~30年で増加していることから、戦後の食生活や生活様式の欧米化が大きく影響していると考えられ、今後も増えると予想されています。

早期段階で発見できれば治療成績が良好ながんですが、初期には自覚症状が現れにくく、発見が遅れがちになる傾向があります」

 

――がんは遺伝が関係するのですか?

「確かに遺伝性のがんもありますが、全体の1割程度に過ぎません。ほとんどが非遺伝性のがんで、食事や飲酒などの生活習慣によるものです。

身近な家族や親族にがんがないからといって安心することはできません」

 

ピロリ菌の除菌で胃がんのリスクを低減

――ピロリ菌を除菌すれば胃がんにならないのですか?

「ピロリ菌の除菌は、胃がんになるリスクを低減することが目的です。現状では、血液検査などでピロリ菌の感染が確認され、なおかつ内視鏡検査で胃炎と診断された場合、健康保険適用での除菌治療が受けられます」

 

――大腸がんの早期発見のためにはどうしたら良いでしょうか?

「まずは『便潜血検査』、いわゆる検便で、便に血が混じっているかどうか調べます。潜血がある場合、内視鏡検査を行うのですが、長いと1日がかりで、また下剤を大量に飲む(1.5~2リットル程度)など、前処置の負担が大きく検査時の苦痛もあり、敬遠される人も少なくありません。

そのため、当院ではCTによる大腸検診『CTC』をお勧めしています。

これはCT画像による仮想の内視鏡検査です。精度が高く、実際の内視鏡画像とほとんど同じように見えます。

検査前に飲む下剤も少量で、検査自体は20分程度で終了します。

健康保険も適用でき、負担が少なく比較的精度の高い診断方法といえるでしょう」

体への負担が小さく、一方で検査精度が高いCTC(イメージ画像)

 

60代からが本当のがん年齢

――高齢者は検診の機会が減るようですが。

「『若いころは職場で毎年検診を受けていたけど何も悪いところはなかった』、また、定年で職場を離れ、地域で検診といわれても、『どうせ何もないだろう』と思っている人が多いように思います。

しかし定年後の60代からが本当のがん年齢なのです。

がんから身を守るためには年齢に応じた検診の必要性に早く気付いて行動することが大切なのです」

年階級別がん罹患率

 

 痛みや体への負担が少ない手術の選択肢も

――胃がん、大腸がんの治療について教えてください。

「痛みや体への負担が少ない内視鏡手術や腹腔鏡手術等も定着しつつあり、80歳以上での手術も珍しくありません。

ただし、『早期がん』であれば治療法の選択肢がありますが、『進行がん』だと治療法が限定され、根治の期待度も下がってしまいます。

がんの進行は大きさではなく“深さ”で鑑別されます。

胃がんは表面を覆う粘膜から発生し、粘膜下層→固有筋層(筋肉の層)→しょう膜と浸潤していきます。がん細胞が粘膜下層までなら早期がん、筋肉まで浸潤したがんを進行がんと呼んでいます。

進行度合いをステージ0~4の5段階で表すこともあり、ステージ2以降を進行がんとすることが多いです」

 

――高齢者のがんは進行が遅いと耳にしますが。

「がんの進行速度と年齢は無関係です。

胃がんには『分化型』と『未分化型』の2種類あり、未分化型は急速に進行することがあり、転移しやすい性質があります。

悪性度が高く未分化型の代表ともいえる“スキルス胃がん”の発症年齢が比較的若い30~50代に多いことなどから、誤解されている人がいるようです」

 

公立昭和病院の役割とは?

――地域のがん診療を大きく担う公立昭和病院の役割は?

「当院は北多摩北部医療圏で唯一、国の『がん診療地域連携病院』に指定され、地域の医療機関と連携してがんの治療にあたっています。

各分野の専門家が協力して、がん検診、化学療法、放射線療法、緩和医療を『チーム医療』として、高度な医療を実践しています」

 

――最後に読者にメッセージをお願いします。

「この地域のがん検診受診率は10%以下で、非常に低いと言わざるを得ません。がんから身を守るためには早期発見が何より大切なことを理解し、がん検診を活用していただきたいです」

【取材協力】
公立昭和病院


2020/8/17

公立昭和病院

北多摩エリアの中核病院 公立昭和病院は、北多摩エリアの中核となる病院です。 同病院の施設、雰囲気など、特別に動画収録させていただきました。上西紀夫院長へのインタビューと合わせて、ご覧ください。 動画(2分30秒)   予防・健診にも注力 公立昭和病院では、呼吸器内科、外科・消化器外科、小児科、産科、心療内科など31科目の診療のほか、救命救急センターや地域周産期母子医療センターなどの専門センターを多数有しています。 また、地域の医療の中心として、市民医療セミナーなどの情報発信にも力を入れています。 ...

ReadMore

2015/12/9

公立昭和病院が医療本を出版 病気への理解・予防に役立てて——79テーマで各専門医が執筆

今受けている治療の理解に役立てて——。 このほど公立昭和病院(小平市)が、同院の医療内容をまとめた『公立昭和病院の最新の医療 病気と治療のやさしい説明』を出版しました。 治療には患者自身の理解・納得が不可欠なことから、その参考になればと発行したといいます。一病院が単体でその医療内容を本にすることは珍しく、都内では初の取り組みとして注目を集めています。 新刊本を手にする公立昭和病院の上西紀夫院長 治療への理解と予防啓発を目的に 同書の発行目的は大きく2つ。 一つは、患者自身が今の治療について理解・納得するた ...

ReadMore

編集部おすすめ

1

小平市を拠点に在宅ホスピスケアなどに尽力している医師で文筆家の山崎章郎さんのトークの動画が、21日㈫から、津田塾大学の公式チャンネルでオンライン配信される。同大学の創立120周年記念事業で、聞き手は、 ...

2

二十四節気の「夏至」を迎える6月は、北半球では1年中で昼が最も長いころ。 そして、その夏至を中心とした約30日が梅雨の期間です。 暦を見ると今年は6月11日に「入梅」とあり、昔の農家ではこの日を目安に ...

3

20万都市にふさわしい地域博物館を創ろう――。西東京市で今春、「地域博物館を創ろう連合会」が発足し、機運醸成を狙いに、市民へのPRなどの活動を行っている。来月3日には、国立民族学博物館の飯田卓教授を招 ...

4

多々困難経て夢の独立開業 西東京市中町の農園の一角に、キッチンカーでイタリア料理を提供する「Fiо Nuku(フィオヌク)」が6日にオープンした。採れたての旬の野菜を用いたパスタなどを、テイクアウトの ...

5

前市長の死去に伴い4月3日投開票で実施された清瀬市長選挙で当選した澁谷桂司市長(48)が、8日、就任記者会見を開いた(記事下にダイジェスト動画)。 そのなかで澁谷市長は、「住んでよかった、住んでみたい ...

Copyright© タウン通信 , 2022 All Rights Reserved.