「#エール飯」から2カ月 いま、地域の飲食店は―—

新型コロナウイルスによる影響を特に大きく受けている地域の飲食店を救おうと、各地で取り組まれている「#エール飯」プロジェクト。

各店のテイクアウトメニューの情報をSNSでシェア・拡散する取り組みですが、その効果はどのようなものなのでしょうか。

地域の飲食店の現状や今後の展望について、東村山市と西東京市の関係者に取材しました。

 

北多摩で最初に取り組んだ東村山

現在、多摩北部の各市で実施されている「#エール飯」。多摩北部で最初に取り組んだのは東村山市です。

東村山市では、東村山市料理飲食店組合の主導のもと、西武信用金庫東村山支店の協力も得て、大分県別府市で展開されていた「#別府エール飯」の仕組みをそのまま持ち込む形でスタート。3月27日には市役所で記者会見も実施し、渡部尚市長も出席するなか、飲食店の窮状を訴えるとともに、テイクアウトメニューのPRを精力的に行いました。

「#東村山エール飯」をPRする、東村山市料理飲食店組合長の萩原繁郎さん(左)と、市内でバーを営む石岡敦さん

 

あれから2カ月。東村山エリアの飲食店はどのような状況なのか。

同組合の組合長を務める萩原繁郎さんが営む和酒と旬魚の店「DINING MOGU MOGU」を訪ねました。

 

4月の売上は55%減。テイクアウトの収入は大きかった

「生活が一変しましたね。夜中まで開けている店なので、完全に夜型の人間でしたが、いまはランチのお弁当を作るために朝5時起きです。

緊急事態宣言が解除されて、少しは夜の営業もできるようになりましたが、眠くなってしまって困っています(笑)」

苦しい状況にあるはずなのに、冗談も交えて明るく話す萩原さん。

東村山市料理飲食店組合組合長で、「DINING MOGU MOGU」オーナーの萩原繁郎さん(同店で)

「コロナ」以前はテイクアウトメニューは扱ってこなかった萩原さんですが、この2カ月で約2000食のテイクアウトメニューを販売したといいます。

「緊急事態宣言の間は夜の営業を休んだため、現金収入はテイクアウトメニューの販売分のみです。

当店の場合は、55%くらいの売上が減りましたが、それで済んだのはテイクアウトメニューのおかげです。

宣伝は、店先の看板と『#エール飯』のSNSだけ。『#エール飯』を見たと言ってたくさんの方が来てくださり、感謝しかありません」

  ◎東村山エール飯(記者会見時の記事)

 

組合の活動を休止に

そう話す萩原さんですが、ランチの弁当をたった一人で40食、50食と作るのは容易ではないはずです。

現状、飲食店の置かれている状況は過酷で、東村山市では、約80店が加盟していた料理飲食店組合の活動を当面休止にしました。休業の店も多く、会費徴収の面からも、できる限り負担を少なく―—との判断になったとのことです。

「今のところ、私が聞く限りでは、東村山で閉店になった店はありません」

萩原さんはそのように話してくれましたが、「コロナ」の収束は見えず、予断を許しません。

 

期間限定でお酒の販売なども実施

そのような状況のなか、「DINING MOGU MOGU」では、新たな取り組みも始めています。

持ち帰り用のお酒を期間限定で販売するもので、醸造量の少ない珍しい日本酒などを提供しているとのことです。

最後に萩原さんはこう話してくれました。

「飲食店だけでなく、酒蔵、問屋、さらには生花店や書店など、さまざまな業種が厳しい状況になっています。『#エール飯』のような新しいチャレンジをして、みんなで経済を回していければと願っています」

なお、萩原さんへのインタビューは、4分ほどの動画にまとめています。

動画(4分2秒)

 

西東京市では、「飲食店」ではない人たちから始まった

飲食店が主体になって取り組まれた東村山市に対して、飲食店関係者ではない人たちによって始まったのが西東京市の「#西東京まちめし」です。

西東京市では、駅前からの情報発信などを通して地域の活性化に取り組む「まちテナ西東京」が主体となり、東村山同様、先行していた「#別府エール飯」を参考にしながら、独自にマッピング機能を設けるなどして、プロジェクトを立ち上げました。

当初は10店舗ほどだった登録店は、「ステイホーム」が強調されたゴールデンウィーク前後に急増し、90店を超えるまでに。田無駅界隈などでは、「#まちめし」のチラシを貼り出す飲食店を見かけることも多くなりました。

企画者の一人で、地域のコミュニティ拠点「ひばりテラス118」の運営に携わる「一般社団法人まちにわ ひばりが丘」の事務局長を務める若尾健太郎さんは、「『SNSを見て買いに来てくれる人もいる』とのお店からの声が届いています」と話します。

「#まちめし」企画者の一人、若尾健太郎さん

「無料で作れるアプリで展開しているため、アクセス数などは測れないのですが、SNSの拡散力は実感しています。

また、地域のお店が統一デザインのチラシを積極的に掲示してくれているので、往来の人たちにも浸透しているように感じます」(若尾さん)

  ◎「西東京まちめし」(スタート時の記事)

 

情報掲載に飛び回る市民も

このような状況のなかで、市民の中から、精力的に情報をアップしてくれる人も現れたともいいます。

いろいろな店を訪ねては、その店に代わって情報をアップしているとのことで、ボランティアで飛び回っているそうです。

「こういう状況のなかで、自分も地域のために何かをしたい、という人が増えているように思います。

『#西東京まちめし』のような企画は、単純に売上面の成果だけでなく、そこに多くの人がかかわっていくという効果も重要です。

情報を通して、『コロナが落ち着いたら、そのお店に行こう』という人も増えるはずで、長い目で見ても効果がある取り組みだと思います」

若尾さんは、このように指摘します。

なお、今後については、テイクアウトメニューのPRだけでなく、「このお店はこんな『コロナ対策』をしているという情報の発信をしていければ」と計画しているそうです。

若尾さんへのインタビューを4分30秒ほどの動画にまとめています。

動画(4分38秒)

 

各市の「#エール飯」

「#エール飯」はインターネット上で情報をシェアしていく仕組みで、東久留米市や清瀬市などでも行政もかかわる形で展開されています。

それぞれ、「#(ハッシュタグ)」をつけて、Facebook、Twitter、インスタグラムなどで情報が見られます。

また、小平市では、独自の企画による「フード応援プロジェクト」などが続けられています。

[関連記事]

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[リンク]

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清瀬エール飯

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