今回、節目なので、写真を替えてみた。
――あ、いや、本題は写真ではない。節目というのは、本紙発行のことだ。
ご記憶の方もいらっしゃると思うが、この地域では、「週刊東興通信」というタブロイド判地域紙が50年発行されていた。それが休刊したのが2008年9月。それを受けて、当時編集部員でもあった私が創刊したのが本紙「タウン通信」だ。その創刊日は10月15日。
あれからちょうど10年になる。さて、何かを少しでも進展させられたのだろうか。
何も発展させられていないともいえるし、続けられているだけで十分という見方もある。人の評価はそれぞれだろうし、個人的な問いは己一人で向き合うことにしたい。
ともあれ、一つはっきり言えるのは、当時とはメディア環境が激しく変わっているということだ。紙媒体の衰退は著しく、地域メディアでも、各社、部数や発行頻度を減らしている。本紙も休刊日が出てしまうのが現状だ。
先日は読者から「経営は大丈夫か?」の心配のお声をいただいた。広告が集中する号では、「情報が足りない」といったご批判も頂戴する。形こそ違え、本紙に対する期待の表れと受け止めている。
紙媒体の置かれる状況は、この先ますます厳しくなるだろう。10年後には、今とまったく異なった光景が広がっているに違いない。
ただ、私自身は、その変わりゆく中で、もがけるだけもがくつもりでいる。この節目に、そのことだけは表明しておきたい。
10年前、「タウン通信」を創刊した朝に最初にかかってきた電話は、名を名乗らない女性からの「出してくれてありがとう。それだけ伝えたかったから」という二言のものだった。苦しいとき、名も顔も知らぬその読者のことを何度も思ってきた。待っていてくださる読者がいると信じられるのは、なんとありがたいことだろう。
時々休刊を交えながらですが、長く発行し続けられるよう精進します。引き続きご愛読のほどよろしくお願いします。
(2018年10月17日号・本紙掲載分から転載)
株式会社タウン通信代表取締役。地域紙「タウン通信」を多摩北部で約10万部発行、ウェブサイトでも地域情報を発信する。著書に
『議会は踊る、されど進む〜民主主義の崩壊と再生』(ころから)、
『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、
『起業家という生き方』(同、共著)、
『スポーツで働く』(同、共著)、
『市役所で働く人たち』(同)がある。
2024/12/3
[タウン抄] AI
タウン抄 「タウン通信」発行人・谷 隆一コラム 高校生の息子が「学校で『AIを巡るトピックと、見解を書け』という課題が出たのだけど、相談に乗ってもらえないかな」と言ってきた。 さっそく検索し、選んだのは、女性キャラクターの対話型AIにのめり込んで(恋をして)自殺をした30代男性の事件。息子が参考にしたのはベルギーのケースだが、アメリカの14歳の少年の事件もある。 この事例自体はニュースになったときに知っていたが、改めて調べると発見が幾つもあった。特に驚愕したのは、男性の自殺後にAIに「このことをどう思っ ...
ReadMore
2024/12/3
[タウン抄]小選挙区と比例
タウン抄 「タウン通信」発行人・谷 隆一コラム 先日の衆議院議員選挙の結果を見て、白けた気分になった。本紙配布エリアの結果を見ると、西東京市が入る東京18区と、小平市が入る19区は都内屈指の激戦区で、当選者と次点の得票差がそれぞれ2182票、2464票しかない。ところが、次点の候補者は比例との重複立候補により、両区とも当選を果たしている。地元からたくさんの国会議員が出ることは喜ばしいのだが、正直言って、「この仕組みでは、投票に行く気は失せるわな」とも思った。 もちろん有権者からすれば、惜敗率への影響を及 ...
ReadMore
2024/11/20
【タウン抄】バレーボール
タウン抄 「タウン通信」発行人・谷 隆一コラム 小4の娘がバレーボールの地域クラブに入った。もともとアニメの影響があったところに夏のオリンピックが一押しとなった。 私自身はバレーボールには知識がなく、観戦経験も乏しい。「ニッポン・チャチャチャ」のイメージくらいしかなかったのだが、小学生の試合を見に行って驚いた。声援が凄まじい。何というか、まるで応援合戦の様相で、子どもも保護者も一緒になって声を張り上げている。 びっくりしたのは、その応援の仕方で、リズミカルな決まったフレーズがある。「流れは ...
ReadMore
2024/10/16
雑感と4ページの件
タウン抄 「タウン通信」発行人・谷 隆一コラム 前号(2024年9月4日発行・516号)の「新米プレゼント」には、過去最高レベルのご応募をいただいた。「良い企画だ!」とお褒めくださった方もいたが、米不足と重なったのはたまたまのこと。中には「半月もお米を食べていない」「災害用の備蓄米を食べている」と書かれている方もいて気持ちが揺らいだが、そこは厳正に抽選させていただいた。 話はうって変わって、1面掲載の難病のソプラノ・坂井田真実子さんのこと。プレコンサートにお誘いいただき訪ねたが、歌声を聴い ...
ReadMore
2024/10/2
[タウン抄]旅ゆけば勝浦
タウン抄 「タウン通信」発行人・谷 隆一コラム この十数年、毎年出掛けている海水浴場が伊豆にあり、今年も7月に出掛けた。が、空いている。 「人出はこれからですかね?」 毎回世話になる海の家のおばちゃんに尋ねると、「いやぁ、海水浴ブームが終わっちゃったみたいで……」とうつむき加減に言う。その方いわく、体に砂が付くのが敬遠され、海離れが起きているのだという。 「最近の人はキレイ好きだから。それに、暑過ぎて『なるべく出掛けないように』なんてアナウンスされるじゃないですか」 と嘆き節が止まらない。 ...
ReadMore
谷 隆一