狭心症や心筋梗塞を引き起こす「動脈硬化」の怖さとは!?

公立昭和病院・循環器内科部長 田中茂博先生インタビュー

日本人の三大死因のひとつ「心臓病」。中でも、生命を脅かす病気として知られている心筋梗塞は、動脈硬化が主な原因といわれています。

加齢とともに進行する動脈硬化は自覚症状がないため自分で気づくことができません。

どのように向き合い、正しい知識で備えておくべきか、地元の救命救急の要でもある公立昭和病院の循環器内科部長・田中茂博先生に伺いました。

(主催/ベネッセスタイルケア  協力/公立昭和病院)

田中 茂博 先生  公立昭和病院 循環器内科部長 日本内科学会認定医 日本循環器学会専門医 日本心血管インターベンション治療学会専門医・指導医

 

心臓病のなかで最も生命にかかわる「虚血性心疾患」  主な原因は動脈硬化の進行によるもの

――心臓病にはどんなものがありますか。

「大別すると3つで、心臓に血液を送る血管(冠動脈)が狭くなる『虚血性心疾患』、脈の乱れる『不整脈』、心臓のポンプ機能が低下する『心不全』があります。

このうち、直接、生命にかかわる恐れが最も高いのが虚血性心疾患で、その中でも『急性心筋梗塞』で亡くなる人が多く、心臓病全体では、日本人の死因の第2位(15・5%)となっています」

 

――心筋梗塞とはどういう症状なのでしょうか。

「加齢とともに冠動脈の血管壁にコレステロールなどがたまり血管の内側に粥腫(じゅくしゅ)あるいはプラークと呼ばれる塊ができてしまいます。

塊が大きくなると血管の内側が狭くなり血流が不十分になり、心臓を動かす血液が不足する『心筋虚血』の状態になります。すると心臓からのSOSとして胸痛や胸の圧迫感を感じるようになります。これが狭心症です。

坂道を歩くなど心臓に負荷がかかったときに症状が出ますが、長くても15分程度でおさまります。

一方、プラークが何かの要因ではじけて血管内で固まるなどで冠動脈が完全にふさがって血流が止まってしまうと、その部分の心筋細胞が壊死して、症状も長時間続くことになります。

この状態を急性心筋梗塞と呼びます」

 

 

加齢とともに自覚症状の無いまま進行する動脈硬化 危険因子を避け、若々しい血管を保つ心がけを

――心筋梗塞や狭心症は予防できますか?

「原因となる動脈硬化の進行を予防することが重要なポイントになります。

ただ、動脈硬化は年齢とともに現れる動脈の変化で、誰にでも起こっていることなのです。

実は0歳児から動脈硬化は始まっています。

血管はゴムホースに例えられることがあります。古くなると硬くなっていきますし、中に異物が残るようになったりします。

加齢による動脈硬化の進行は避けることができませんが、進行のスピードを速めないことが大切なのです」

 

――進行スピードを速めないためにはどうすればよいですか?

「動脈硬化を加速させる危険因子を避けることです。

特に大きなものに『高血圧』『脂質異常症(高脂血症)』『喫煙』『糖尿病』の4つがあります。

危険因子を回避し、抱えている人は一つでも減らして進行を抑え、若々しい血管を保つことに努めることです。

もう一つ知っておいていただきたいのは、動脈硬化はそれ自体に自覚症状がなく、自分では気づかないということ。知らず知らずのうちに危険は忍び寄ってくるのです。だから、怖いのです。

日頃から健康診断をしっかり受け、自分の体の状態を把握しておくことが大切です。

そして、4つの危険因子があるようなら、それが1つ2つのうちに対処していくことが必要です。

リスクの少ないうちに取り組めば、心身ともに、負担が小さくて済みます。

また女性の場合、閉経後に女性ホルモンが激減する影響で60代以降急速に動脈硬化が進行する傾向があることも知っておいてほしいですね」

 

――危険因子への対処とは、具体的には?

「基本は食事です。それと、運動。ただ、全部を理想通りにこなすのは容易ではありません。

できない部分は薬に頼ることになります。医師と相談しながら日頃の健康管理を行うことをお勧めします」

 

 心筋梗塞は発症後の早期治療がカギ   胸痛だけでなく腹痛や肩痛にも注意を

――心筋梗塞は発症するとどのような症状が?

「6、7割のケースで、胸に体験したことのない強い痛みや圧迫感を感じます。

痛みが断続的に、長時間続きます。中には胸ではなく、歯やお腹、肩に痛みが出る方もいます。

当院でも、『朝から胃が痛い』と消化器内科を受診された方を循環器内科で再検査したところ、心筋梗塞だった例があります」

 

――治療はどのようなものですか。

「急性心筋梗塞に対し最も重要な治療は、閉塞した冠動脈を再び開通させ心臓への血流を確保することです。

一刻も早く行い心筋梗塞の大きさを縮小させることで、予後も良好になります。

具体的にはカテーテルを使って行うのが主流です。開胸せず局所麻酔で行いますので、スピーディな処置が可能です。

当院では搬送されてから90分以内に再開通するよう徹底しています。

発症から6時間以内に完了するのが効果的ですが、12時間以内なら有用とされています。

心筋梗塞では亡くなる方の多くが発症から1時間以内に集中しており、病院に到着できれば93%は助かっているデータもあります。

心筋梗塞が疑われる場合は、一刻も早く受診することが重要です。

救急車を呼ぶか悩む場合は、東京消防庁の救急相談センター(電話で『#7119』)を頼ってください」

 

 心筋梗塞は再発しやすい病気 本人の意識と努力で再発予防を

――後遺症などは?

「一般的には大きな症状は出ませんが、心筋梗塞は再発の恐れがあり、そのリスクを抱えているので、油断は禁物です。原因である動脈硬化を治したわけではありませんから。

退院時などに患者さんから『治してくれてありがとう』と言われるのですが、私は『治していませんよ。詰まったところが通っただけですよ』と答えています。

再発予防のためにはご本人の努力で動脈硬化の進行を防ぐことが不可欠なのです。退院がスタートなのだと知ってほしいですね」

 

――セミナーではどんなお話が聞けますか。

「まずは動脈硬化がどういうものなのかをお話しします。そのうえで、具体的な予防法などをお伝えするつもりです。

何より大切なことは、自分の体がどういう状態なのかを正しく知ろうとすることです。それが早期発見にもつながります。

そんなお話を、事例を交えながらできるだけわかりやすく、お伝えできればと思っています」

(※編集部注 イベントは終了していますが、地域情報として掲載を継続しています)

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