先月10日号の本欄で「人生最後に読む本」をみなさんに問いかけたが、トホホ、書名があったのはわずかに5通のみ。同号4面の「国営昭和公園レインボープール」の招待券応募には約100通もの応募をいただいたが、哀しいかな、9割もの確率でコラムがスルーされてしまった。ああ、無情。
悔しさを引きずりつつも、今号でも、もう一度、本の話を。
先日、編集部に、『「私の履歴書」―昭和の先達に学ぶ生き方』(朝日新書)が送られてきた。地域紙といえども月に数冊は出版社や著者から本が送られてくる。日々の業務に追われて大半はパラパラと目を通すだけになってしまうのだが、これはすこぶる面白く、つい読みふけってしまった。
タイトルで想像つく通り、同書は日本経済新聞の名物コーナー「私の履歴書」から「先達」の生き方を紹介している。「履歴書」の抜粋ではなく、元日本経済新聞論説委員の著者・石田修大さんが、「貧乏」や「人の縁」といったカテゴリーごとにエピソードをまとめている。データに基づいた解説も加えられ、昭和という時代が見える内容だ。
紹介されるのは、田中角栄、平山郁夫、ミヤコ蝶々、稲尾和久といった著名人70人。知らなかったが「私の履歴書」は1956(昭和31)年に始まっており、この5月までに788人が登場しているのだという。若者にとっては先代を知るために、中高年にとっては生きた時代を振り返るために、得るものの多い一冊と言えるだろう。
自分史をまとめるコツが紹介されているのもシニア世代には高ポイントか。
朝日新聞出版、780円(別税)。
(2015年7月2日号・本紙掲載分から転載)
◎『「私の履歴書」―昭和の先達に学ぶ生き方』
株式会社タウン通信代表取締役。地域紙「タウン通信」を多摩北部で約10万部発行、ウェブサイトでも地域情報を発信する。著書に
『議会は踊る、されど進む〜民主主義の崩壊と再生』(ころから)、
『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、
『起業家という生き方』(同、共著)、
『スポーツで働く』(同、共著)、
『市役所で働く人たち』(同)がある。
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