「めやに」のトラブル

2020年8月18日

街かど診療室

保谷伊藤眼科・伊藤勇院長のコラム

 

眼科に外来受診される方で「めやに」を訴えて来られる方は多いです。

この「めやに」、じっくりと診て診断しないと治りにくい場合も多いのです。

多くの患者さんは、「めやに」が出たので目薬をくださいと申し出ます。しかし、目薬で治る「めやに」と治らない「めやに」があるのです。

「めやに」の症状があり、白目や赤目が充血している場合は、「細菌性」もしくは「ウイルス」感染、もしくはアレルギーを疑い検査します。

「めやに」の性状や流涙の有無、組織の欠損や組織の腫れ、かゆみの有無などをみて感染の種類もしくはアレルギーを判定し、有効な点眼薬を処方します。これを求めて多くの患者さんが眼科に来院します。

しかし、「めやに」の出方や性状、出てくる時間に特徴があり、充血していない場合は、じっくりとまぶたを観察します。皮膚、まつげ、まぶたの皮脂腺であるマイボーム腺を観察するのです。

目が乾く、疲れやすい、1日に数度ズキッと痛む、目の周りが涙っぽいなど、ドライアイ様の症状と目やにの訴えがあった場合は、マイボーム腺をチェックします。通常はサラサラしたオイルがにじみ出ている場所ですが、ここの機能が落ちている場合は、ねっとりとした白~黄色の脂がべとついています。

これは古くなった脂が停滞している現象で、朝の目頭にたまる「めやに」の原因です。この場合、原因を除去するために、目の周囲を温める眼温罨法にてマイボーム腺の循環を促し、ドライアイと目やにを治す方向で指示しますが、治癒するまでに時間がかかります。この場合の「めやに」を直接除去する点眼はないので、対症療法の点眼となるため、受診する度の説明で理解してもらいます。

1日に何度も目がふさがるほどの「めやに」が出る場合は、まつ毛の根元をチェックします。特徴的な所見がある場合は、目の周りのシャンプーを指示します。これは、「まつ毛ダニ」の増殖で異常分泌物によるもので、清潔を保つことで改善します。人間の皮脂腺や毛根には「毛ダニ」が寄生していて共存していますが、免疫が落ちたり不潔な環境(化粧品が落ちきっていない等)でバランスが崩れると不快な「めやに」が増殖します。

「めやに」といってもいろんな種類がありますので、近くの眼科で診断してもらい、適切な治療を受けましょう。

 

プロフィール

伊藤 勇

「保谷伊藤眼科」院長。大学病院で最先端の眼科医療に携わった後、同院を開業。白内障等の日帰り手術のほか、網膜硝子体疾患手術、緑内障手術、眼科一般診療などを幅広く行っている。公式ホームページ:http://www.itoganka.com/

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