百九、東洋医学の人体観5  巨刺(こし)(陰陽五行)

医針伝心

土居治療院 土居望院長コラム

 

今回は霊枢九変の法、巨刺、を例に東洋医学の謎を解き明かしてみよう。

巨刺の現象とは、人体の一点を刺激すると、その刺激は反対側の同じ位置に同じ作用が起こるというもの。

この現象は科学的にも実証されていて、鍼灸大学の教師たちなどはこの現象を〈人体にはツボとツボを機能的に結ぶ経絡というルートで繋がっている〉と説明する。
ところが私にはどう考えても、経絡ともツボとも東洋医学とも無関係な人体の持つシステムなのである。

寒い日に手足が冷たく感じられ、ストーブに両手を当てて温めた経験は誰にでもあると思う。
ではそのとき、片手だけを温めてみてはどうであろう。少し長く時間がかかってもやはり両手が温まるはずである。

右手と左手は東洋医学の経絡でも、西洋医学の末梢神経系でも繋がってはいない。付け加えるならば、健康な人の両手は早く温まり、自律神経などが不安定な人は温まりにくいはずだ。

現代のテクノロジーは巨刺が脳内の視床下部に働いていることを突き止めている。
つまり、自律神経系の最高中枢に働いて恒常性維持機能を賦活させる作用が本来の巨刺であろう。

この巨刺、はり治療法の一つであるが何もはりでなければいけないわけではない。
両手が冷えて体の体調が悪い時には家の中で片手だけを、あるいは片足だけをよく温めてみてほしい。両手が温かく感じられたとき、体も楽になっているはずである。

プロフィール

土居 望

「土居治療院」院長。開業37年で、治療した患者はのべ20万人以上。鍼灸師卒後臨床研修指導員。ツボや鍼灸への研究を続けており、独自の治療観を持つ。著書に『鍼灸の奥義、あなたもツボ治療の達人になれる』(青萌堂)、『東洋医学ノート』(法研)がある。TEL042-475-9375。東久留米市東本町13-2。

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